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更新日: 投稿日: 弁護士 中村 望

新型コロナの影響による倒産を回避するための資金繰り改善策を解説

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響により甚大な打撃を受け、倒産に追い込まれる小規模事業者や中小企業は急速な勢いで増えています。
経済活動再開の目処が立たない状況の中、「なんとか倒産を回避したいけれど、資金繰りは悪化する一方でどのような対策を取ればよいかわからない」という深刻な悩みを抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

今回は、新型コロナ関連の倒産状況や倒産件数が多い業種、倒産を免れるための資金繰り改善策、深刻な経営難に陥った中小企業の相談先などについて解説します。

新型コロナ関連の倒産状況

東京商工リサーチの調べによると、新型コロナウイルス関連の負債1,000万円以上の倒産件数は2020年4月に入ってから急増し、4月27日時点で累計100件(倒産準備中、弁護士一人を含む。)を超えたそうです。
倒産件数が特に多いのは、インバウンド需要の激減により甚大な打撃を受けた観光業界・ホテル業界です。訪日外国人からの相次ぐ予約キャンセルにより大きなダメージを受けた老舗のホテルや温泉旅館が経営破綻するケースも目立っています。
日本政策金融公庫が2019年11月に三大都市圏の取引先900社を対象に実施した「2020年の中小企業の景況見通しに関する調査」では、2020年の業況改善に向けて期待する要素として「海外景気の回復による外需の増加」がトップ(22.8%)、次いで「2020年予定の東京五輪に伴う需要の発生」(17.2%)という結果でした。しかし、実際は、世界的な新型コロナウイルスの蔓延により、期待が大きく裏切られる事態となりました。多くの国がウイルス感染拡大防止のために出入国を制限したため、外需は増加どころか激減しました。また、東京2020オリンピックは一年の延期が決定されるという異例の事態となりました。

「コロナ倒産」が多い業種

コロナ関連の倒産が特に多い業種について、業種別の状況をみていきたいと思います。

1.ホテル・観光業界

早い時期から新型コロナウイルスの影響を激しく受けたのがホテル・観光業界です。相次ぐ予約キャンセルにより窮地に追い込まれたホテルや旅館は少なくありません。
日本政府観光局(JNTO)によると、中国からの旅行者の激減による影響で、2020年2月の時点で外国人旅行者数は前年同月より58.3%も減少していたそうです。その後、欧米にも感染が拡大し、出入国制限を実施する国が増えたことから、さらに状況は悪化し、2020年3月の外国人旅行者数は前年同月より93%減少するという非常に厳しい状況になりました。
2015年に訪日外国人数が過去最高を記録して以降、2019年までは右肩上がりの伸長を遂げており、政府はオリンピックイヤーの2020年に4,000万人という目標を掲げていましたが、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大によりオリンピックも延期となり、目標達成の可能性はほぼ絶たれてしまいました。
インバウンド市場の急激な落ち込みにより、宿泊施設だけではなく、タクシーや観光バス、宿泊施設用のアメニティーグッズのメーカー、シーツやタオルを貸し出すリネンサプライ業者、ホテルや飲食店に新鮮な食材を提供する水産業や農業等も影響を受けています。

2.外食産業

緊急事態宣言の発令により飲食店に対して休業要請を出す都道府県が続出する中、外食産業全体が大きな影響を受けています。飲食店経営者を対象としたアンケート調査を行っている飲食店.COMが実施した2020年3月の経営状況に関するアンケート調査の結果によると、2020年3月の売上状況が前年同月より下がったという回答は86.1%に上りました。
外出自粛による巣ごもり消費*の需要に応えるべく、テイクアウトやデリバリー販売の強化に取り組む飲食店も多いですが、デリバリーは手数料が高くて利益が出にくい等の問題もあり、通常営業時のように利益を得るのは難しいのが実情のようです。
大阪のレストランのシェフ達が発起人となり、政府に対して飲食店の倒産防止対策として家賃と雇用者の給与の補助を求める署名活動が展開され、開始から1週間で全国から10万人以上の署名がインターネット上で集まったそうです。
*インターネットショッピング、カタログ通販、食事のデリバリーサービス等を利用して、外出せずに家の中での生活をたのしむ消費傾向のこと。

3.幅広い業種へ広がる打撃

インバウンド業界や外食産業以外の業界にも新型コロナウイルスの影響による打撃は広がっています。個人消費の落ち込みから、婦人服や靴等を扱うアパレル業界も打撃を受け、経営破綻する企業も続出しています。ブライダル業界では、結婚式のキャンセルが相次ぎ、資金繰りに苦しむ結婚式場も多いようです。
また、世界的に需要が落ち込んでいる自動車生産に関わるメーカーも大きな打撃を受けています。海外製部品の調達に支障が生じているために生産停止となっているケースもあるそうです。自動車の生産には部品メーカー等多くの中小企業が関わっているため、需要低迷が長引くことによる中小企業への影響の深刻さが懸念されています。
その他、学校休校で給食が行われないことの影響を受けた食品製造業、外出自粛により客足が激減したアミューズメント施設や生活雑貨店等、新型コロナウイルスによる深刻なダメージを受ける業種は規模や地域に関わらず広がっているようです。

中小企業が倒産を回避するための資金繰り改善策

中小企業が倒産を回避するためには、どのような方法があるのでしょうか。新型コロナウイルスにより打撃を受けた小規模事業者や中小企業に有効な資金繰り改善策について説明します。

1.政府による助成金や融資を活用

政府や自治体は、新型コロナウイルスにより打撃を受けた小規模事業者や中小企業の資金繰りを支援するために様々な助成金や融資制度の整備を進めています。公的な支援制度は条件が厳しい、手続きが煩雑でわかりづらいなどという問題点も指摘されていますが、条件の大幅な緩和や手続きの簡素化等の措置も次々と講じられています。「審査に通る自信がない」などと最初から諦めずに、積極的に活用を検討してみましょう。

2.融資のリスケによる資金繰り改善

事業の継続に必要な人件費等の経費よりも金融機関への返済を優先している場合、金融機関からの融資のリスケジュールにより資金繰りを大幅に改善できる可能性もあります。
リスケジュールにより、1年間程度、元金分の返済をストップして利息分のみの返済にしてもらうことができれば、人件費等、事業の継続に必要な経費に充てる資金を確保することが可能です。
リスケジュールの手順等について知りたい方はこちらの記事を参考にして下さい。

3.倒産回避策としての事業譲渡やM&A

助成金の活用や融資のリスケ等を行っても資金繰りが改善できず、倒産を避けられない状況に陥った場合、倒産を回避するための一つの選択肢として、事業譲渡やM&A(会社売却)を検討してもよいでしょう。
M&Aにネガティブなイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、最近は後継者不在の中小企業の事業承継手段としても注目されています。資金繰りが苦しくて赤字が続いている状況でも、事業譲渡やM&Aにより倒産を回避できる可能性はあります。
事業譲渡やM&Aが実現して倒産を回避できれば、従業員や経営者自身の生活を守ることにもつながります。事業は新しい経営者に引き継がれますので、従業員は同じ環境で仕事を続けることができますし、取引先に迷惑をかける心配もありません。また、事業譲渡やM&Aが成功すれば、会社の清算手続による廃業よりも経営者の手元に残る金額は多くなる可能性が高いというメリットもあります。

新型コロナウイルスの終息時期は?

新型コロナウイルスの影響により資金繰りに苦しむ小規模事業者や中小企業の経営者の多くは、苦しい状況がいつまで続くかわからない先が見えない状況に対して大きな不安を抱いているかと思います。先行きが不透明な状況はいつまで続くのでしょうか。終息時期について、現在までに明らかになっている情報をまとめてみました。

1.終息時期の見通しは立たない状況

2020年5月現在、新型コロナウイルスは世界中で猛威を奮っており、感染拡大が収まる見通しが立たない状況です。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は2020年4月27日の時点で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、終息には程遠い状況だと警鐘を鳴らしたそうです。
新型コロナウイルスの影響が収まる時期としては以下の2つの段階があるといわれています。

  • 収束:感染者数が減少傾向に転じて、ある程度の経済活動が再開できる状況
  • 終息:感染者がほとんどいなくなる状況

もともと「収束」とは混乱していたものが収まること、「終息」とは物事が終わってやむことを指します。完全な「終息」までには長い期間を要するかもしれませんが、外出自粛等の政策により社会的な混乱の「収束」の時期を早めることは可能なのではないでしょうか。

2.経済活動を再開した国もある

実際、既に「収束」の時期を迎えて、経済活動を再開した国もあります。中国では、2020年3月から、閉店していた飲食店などが徐々に営業を開始し、日常的な経済活動に向けて動き出しています。複数の地方で消費活性化政策の一環として商品券の配布も行われたそうです。4月26日には、新型コロナウイルスの震源地といわれる中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスの入院患者全員が退院したと報道されました。
独自の感染拡大予防策の成功が世界中の注目を集めた韓国も、2020年4月中旬頃から、経済活動再開に向けた動きを進めているようです。韓国では、ドライブスルー方式やウォーキングスルー方式による大規模なPCR検査や感染者の行動履歴の公開などの対策が功を奏し、2020年4月18日に一日あたりの新規感染者数が20人を下回り、その後の1週間程は10人前後で推移しました。
早い段階からの水際対策等により感染抑止に成功したとして世界中から称賛されたニュージーランドも4月27日から建設業や製造業などの一部の経済活動を再開することを発表しています。

3.気温や湿度と感染拡大の関連性

新型コロナウイルスの感染拡大は、季節性インフルエンザと同様に気温の上昇とともに収まるのではないかという希望的観測を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。実際、タイやベトナムなどの気温が高い国では、新型コロナウイルスの感染者数は欧米諸国と比較するとかなり少ないです。
米国政府の機関での研究結果では、日光が当たる場所や高温・高湿度の環境下では、より短い時間で新型コロナウイルスの威力が弱まる傾向が示されたという報道もありました。しかし、中国にある復旦大学の研究では、気温や紫外線量が上昇しても新型コロナウイルスの感染拡大能力は変化しないことが明らかになったそうです。
気温や湿度の変化と新型コロナウイルス(COVID-19)の感染力の関連性に関する研究は今後も世界中の研究組織で行われる可能性が高いですが、完全に解明されるまでには時間がかかるのではないでしょうか。

4.治療薬やワクチンの開発時期

緊急事態宣言を受けて発せられた休業要請や外出自粛要請等の活動制限が解かれても、国民の不安感が解消しない限りは経済活動が完全に元に戻ることは難しいかもしれません。また、日本国内の感染者数が減少しても、他の国での感染拡大が続く限りは、インバウンド需要の回復は期待できません。インバウンド需要の回復を図るためには、治療薬やワクチンが開発されて、世界中の人達に行き渡ることが不可欠です。
治療薬に関しては、富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬のアビガン、米国の製薬会社がエボラ出血熱の治療薬として開発した点滴薬のレムデシビルという既存の薬が新型コロナウイルスの治療に効果を発揮する薬の有力候補として注目されています。アビガンは発熱、咳、呼吸困難等の症状の改善に効果を発揮するそうで、実際にアビガンを服用して症状が軽くなったという事例は多いようです。また、レムデシビルは肺炎を起こしている重傷者に対しても一定の効果が期待できるそうです。ただし、アビガンやレムデシビルが全ての新型コロナウイルス患者に対して効果を発揮するとは限りません。
ワクチンに関しては、WHOの報告によると、現在、世界中で70以上の開発プロジェクトが進行しています。ただし、ワクチンが流通するまでには効果や安全性を確認するための臨床試験等が必要となるため、最短でも1年程度の期間がかかるようです。新型コロナウイルスに対する有効性と安全性が確立されたワクチンが世界中に流通するまでは、新型コロナウイルスの「終息」は期待できない可能性が高く、長期戦を覚悟する必要がありそうです。

新型コロナの影響で経営難に陥った中小企業の相談先

長期戦に耐えられず倒産の危機に直面しそうだという場合、早めに専門家に相談することをおすすめします。新型コロナウイルスによる経営の危機を乗り越えるためには、経営者の前向きな姿勢が大切ですが、長い間、厳しい状況下に置かれると誰でも疲弊してしまいます。信頼できる専門家に相談することにより、精神的な負担も軽減されますし、客観的なアドバイスを受けることにより意外な打開策が見つかる可能性もあります。中小企業が利用できる公的な相談窓口を2つご紹介します。

1.経済産業省が設置した全国の相談窓口

2020年5月現在、経済産業省が設置した全国の「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」では、新型コロナウイルスの影響を受けている中小企業・小規模事業者を対象として、専門家が土日祝日も無料で経営に関する相談に応じています
各窓口の電話番号と受付時間については下記の公式サイトをご確認ください。

2.中小企業再生支援協議会の相談窓口

中小企業の再生に向けた取り組みの支援のために設立された中小企業再生支援協議会という公的機関では、弁護士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関経験者等の専門家による経営に関するアドバイスを無料で受けることが可能です。中小企業再生支援協議会も全国各地に設置されています。
中小企業再生支援協議会について知りたい方は下記の公式サイトをご確認下さい。

まとめ

今回は、新型コロナ関連の倒産状況や倒産件数が多い業種、倒産を免れるための資金繰り改善策、深刻な経営難に陥った中小企業の相談先などについて解説しました。

新型コロナウイルスの感染拡大が完全に「終息」を迎えるまでには時間がかかりそうですが、政府が提供する助成金等の支援制度や相談窓口を積極的に利用して厳しい状況を乗り切りましょう。

我々東京スタートアップ法律事務所は、法務・経営・会計のプロとして、新型コロナウイルスの影響を受けて資金繰り等に苦しむ中小企業のサポートに全力で取り組んでいます。感染防止のため、お電話やZoom等のオンライン会議システムによるご相談も受け付けていますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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執筆者 弁護士中村 望 東京弁護士会
現在弁護士数が増え続けている中で、問題解決のクオリティが非常に重要。依頼者の方からの連絡に迅速に対応したり、何でも気軽に相談できる雰囲気づくりをしたりすることで、依頼者の方との信頼関係を築き、依頼者の方の希望に沿った問題解決をできるように心がけている。