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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

不同意性交等罪は初犯でも拘禁刑実刑になる?執行猶予の条件や逮捕の流れを解説

不同意性交等罪は初犯でも拘禁刑実刑になる?執行猶予の条件や逮捕の流れを解説
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不同意性交等罪(旧:強制性交等罪)の疑いをかけられた際、「初犯でも刑務所に入らなければならないのか」「家族や会社に知られずに済むのか」という不安は、ご本人だけでなくご家族にとっても計り知れない重圧となります。

夜も眠れず、将来への絶望感に押しつぶされそうになっている方もいらっしゃるかもしれません。

2023年の法改正により、性犯罪に関する規定は大きく厳罰化されました。

「同意がなかった」と判断される範囲が広がり、法定刑の下限も重いため、原則として執行猶予がつきにくいという厳しい現実があります。

しかし、諦めるにはまだ早いです。

適切な初動対応と法的な主張を行えば、未来を守れる可能性は残されています。

本記事では、不同意性交等罪の概要や法改正のポイント、そして弁護士の視点から見た「執行猶予獲得のための現実的な戦略」について、法的な観点から分かりやすく解説します。

不同意性交等罪とは?

不同意性交等罪(刑法177条)とは、相手の同意を得ずに性交等を行う犯罪です。

これまでの「強制性交等罪」や「準強制性交等罪」が統合・改正され、令和5年(2023年)7月13日より施行されました。

従来の法律では「暴行・脅迫」や「心神喪失・抗拒不能」が要件とされていましたが、改正法では、より実態に即して「同意しない意思を形成し、表明し、又は全うすることが困難な状態」に乗じて性交等を行うことが処罰の対象となりました。

具体的には、以下の8つの行為や事由によって、相手が同意できない状態にあった場合、本罪が成立します。

  1. 暴行・脅迫:殴る蹴る、また言葉で脅す行為
  2. 心身の障害:知的障害や精神障害がある状態
  3. アルコール・薬物の影響:泥酔状態や薬で意識がもうろうとしている状態
  4. 睡眠・意識不明瞭:寝ている間や意識がはっきりしない状態
  5. 拒絶するいとまがない:不意打ちや突然の行為
  6. 恐怖・驚愕:あまりの恐怖や驚きで体がすくんでしまう状態
  7. 虐待に起因する心理的反応:日常的な虐待により逆らえない状態
  8. 地位・関係性の利用:上司と部下、教師と生徒など、断ると不利益を被る関係性の利用

このように、暴力がなくても「地位を利用した」「お酒で酔わせた」などのケースも処罰対象となる点が、今回の改正の大きなポイントです。

弁護士の視点:実務で争点になりやすい「同意」の壁

実務上、最も難しいのが「同意の有無」の立証です。

加害者側が「相手も合意していた」と思っていても、被害者側が「怖くて声が出せなかっただけ」と主張する場合、改正法の下では不同意性交等罪が成立する可能性があります。

「拒絶しなかった=同意した」という理屈は、現在の捜査実務では通用しないと認識し、慎重に行動する必要があります。

出典:e-Gov法令検索「刑法」第177条

相手の年齢や年齢差によっては同意があっても不同意性交になる

今回の改正では「性交同意年齢」が従来の13歳から16歳へと引き上げられました。

これにより、たとえお互いに同意があったとしても、相手の年齢によっては不同意性交等罪として処罰される可能性があります。

具体的なルールは以下の通りです。

  • 相手が13歳未満の場合

同意の有無にかかわらず、性交等を行えば一律で処罰されます。

  • 相手が13歳以上16歳未満の場合

行為者が相手より5歳以上年上である場合、同意があっても処罰されます。

(例:20歳の大学生と15歳の中学生が同意の上で性交を行った場合、不同意性交等罪が成立します)

これは、判断能力が未熟な子どもを、年長者が性的な対象とすることから保護するための規定です。

未成年者との交際においては、この年齢規定を正しく理解しておく必要があります。

不同意性交等罪に科せられる刑罰と量刑相場

不同意性交等罪の法定刑は、「5年以上の有期拘禁刑」です(刑法177条)。

この「5年以上」という下限は非常に重いものです。

従来の強姦罪(3年以上)から、2017年の改正で現 不同意性交等罪(旧 強制性交等罪)(5年以上)へと厳罰化された流れを引き継いでいます。

  • 罰金刑はありません:必ず刑務所に収容される身体拘束を伴う刑罰が科されます。
  • 上限は20年:有期刑の上限は原則20年です。

量刑相場としては、犯行の悪質性(暴行の程度、計画性、回数など)や被害者の処罰感情によって左右されますが、5年〜7年程度の拘禁刑の実刑判決が出ることが一般的です。

初犯でも拘禁刑実刑になる可能性は高い

結論から申し上げますと、不同意性交等罪は、初犯であっても実刑判決(刑務所に入ること)になる可能性が極めて高い犯罪です。

その最大の理由は、前述した「法定刑の下限が5年」であることにあります。

日本の法律において、執行猶予をつけることができる判決は「3年以下の拘禁刑」と定められています(刑法25条)。

つまり、法律通りの刑罰(最低5年)が言い渡された場合、その時点で執行猶予の条件(3年以下)を満たさないため、自動的に実刑となってしまいます。

ここが実務の分かれ目

この「5年の壁」を「3年以下」まで引き下げる(減軽してもらう)ことは、容易ではありません。

単に反省の弁を述べるだけでは不十分であり、被害者の方からの「許し(宥恕)」を得た上で、裁判官の心を動かすだけの証拠に基づく強力な情状事実を積み上げる必要があります。

これができるかどうかが、運命を分ける分岐点となります。

不同意性交等罪では原則、執行猶予はつかない

前述の通り、不同意性交等罪の法定刑は最短でも5年であるため、そのままでは執行猶予をつけることができません。

執行猶予を獲得するためには、裁判官に「酌量減軽(しゃくりょうげんけい)」を認めてもらい、判決を3年以下に短縮してもらう必要があります。

酌量減軽とは、犯罪の情状に同情すべき点がある場合に、裁判官の判断で刑を減軽することです(刑法66条)。

しかし、性犯罪は被害者の心身に深い傷を残す重大な犯罪であり、裁判所も厳しい姿勢で臨む傾向にあります。

「初犯だから」「反省しているから」という理由だけでは、簡単に減軽は認められません。

不同意性交等罪で執行猶予がつくケース

原則として実刑となる不同意性交等罪ですが、例外的に執行猶予がつく(判決が3年以下に減軽される)ケースも存在します。

それには、以下のような極めて有利な事情を積み重ねる必要があります。

  1. 被害者との示談が成立している(特に「宥恕」があるか)
    最も重要な要素です。単に金銭的な賠償(示談金)を支払うだけでなく、「処罰を求めない」という宥恕(ゆうじょ)の意思表示を被害者様から得られるかどうかが鍵となります。
    実務上、この「宥恕条項」が入った示談書を検察官や裁判所に提出できるかどうかで、判断(起訴・不起訴や量刑)が大きく変わる傾向にあります。
  2. 計画性が低く、突発的な犯行である
    事前の準備がなく、魔が差して行ってしまった場合など、悪質性が比較的低いと判断される場合です。
  3. 再犯防止の環境が整っている
    家族による監督体制がしっかりしている、専門のクリニックで治療を受ける意思があるなど、二度と同じ過ちを繰り返さない環境があることが重視されます。

特に示談の成立は、減刑・執行猶予獲得のための最大のポイントとなります。

しかし、被害者の処罰感情は通常峻烈であり、加害者本人や家族が直接交渉することは困難かつ危険です。

弁護士を通じた慎重な交渉が必要不可欠となります。

不同意性交等罪で逮捕される流れ

不同意性交等罪の容疑がかかった場合、警察による捜査は慎重かつ徹底的に行われます。

被害者からの被害届や告訴状が受理されると、防犯カメラの映像解析、DNA鑑定、目撃者の証言収集などの裏付け捜査が進められます。

ある日突然警察が自宅に来る場合もあれば、任意同行を求められる場合もあります。

逮捕されると、以下のスケジュールで刑事手続が進んでいきます。

  1. 逮捕(最大72時間):警察署の留置施設に収容され、取調べを受けます。この間は家族であっても面会はできません。
  2. 勾留(最大20日間):検察官が「逃亡や証拠隠滅の恐れがある」と判断し、裁判所が認めると、原則10日間、延長を含めると最大20日間の身体拘束が続きます。
  3. 起訴・不起訴の決定:勾留期間が満了するまでに、検察官が起訴(裁判にかける)か不起訴(罪に問わない)を決定します。

不同意性交等罪は重罪であるため、逮捕されるとそのまま長期間勾留され、起訴される可能性が高い傾向にあります。

最初の72時間が勝負です

逮捕直後の72時間は、たとえご家族であっても面会できないケースがほとんどです。

この孤独で精神的に追い詰められやすい期間に、唯一自由に出入りできるのが弁護士です。

取調べで不利な供述調書(一度サインすると撤回困難な書類)を作らせないためにも、逮捕されたら即座に弁護士を呼び、取調べのアドバイスを受けることが後の運命を左右します。

現行犯逮捕の場合

犯行の直後や最中に、警察官や一般人によってその場で取り押さえられるのが現行犯逮捕です。

不同意性交等罪の場合、路上や店内での犯行、あるいは被害者の助けを求める声に駆けつけた警察官によって逮捕されるケースなどが該当します。

現行犯逮捕の場合、逮捕状は不要であり、その場で身体拘束が開始されます。直ちに警察署へ連行され、厳しい取調べが始まります。

後日逮捕の場合

被害届が出された後、警察が捜査を行い、裁判所から「逮捕状」の発付を受けて逮捕を行うのが後日逮捕(通常逮捕)です。

「数か月前の出来事で突然警察が来た」というケースはこれに当たります。

不同意性交等罪では、被害者が被害を申告するまでに時間がかかることも多く、DNA鑑定などの証拠が固まってから逮捕に踏み切るため、事件発生から逮捕まで数か月〜半年以上かかることも珍しくありません。

不同意性交等罪を犯した場合に弁護士に依頼するメリット

不同意性交等罪は、実刑判決のリスクが非常に高い重大な犯罪です。

個人の力だけで解決しようとすることは、地図を持たずに遭難するようなものであり、極めて危険です。

刑事事件に精通した弁護士は、あなたの味方となり、社会的な死(解雇や報道など)を防ぎ、最善の結果へと導くための羅針盤となります。具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。

被害者との示談交渉を任せられる

前述の通り、執行猶予や不起訴を獲得するために最も重要なのは「被害者との示談」です。

しかし、性犯罪の被害者は加害者に対して強い恐怖や嫌悪感を抱いており、加害者本人やその家族が直接連絡を取ることは、新たな火種(脅迫や証拠隠滅の疑いなど)を生むため絶対に避けるべきです。

弁護士であれば、第三者として冷静に被害者側の心情に配慮しながら交渉を行うことができます。

適切な示談金(慰謝料)を提示し、示談が成立すれば、実刑回避の可能性は大きく高まります。

早期釈放・不起訴獲得の可能性が高まる

逮捕・勾留が長引けば、会社や学校に事件が知れ渡り、解雇や退学といった社会的制裁を受けるリスクが高まります。

弁護士は、検察官や裁判官に対し「逃亡や証拠隠滅の恐れがないこと」を法的に主張し、早期の身柄釈放(勾留阻止や保釈)を求めます。

また、検察官に対して示談成立の事実や再犯防止策を訴えることで、起訴自体を避ける「不起訴処分」の獲得を目指します。

不起訴となれば前科はつかず、社会復帰もスムーズになります。

執行猶予獲得に向けた法廷弁護

万が一、起訴されて裁判になった場合でも、弁護士は執行猶予つき判決(実刑回避)を目指して全力を尽くします。

具体的には、被告人の深い反省を示す証拠の提出、家族による監督体制の証明、専門医療機関への通院実績の提示などを行い、裁判官に対して「刑務所に入れるよりも、社会の中で更生させるべきである」と説得力を持って主張します。

この情状弁護の質が、判決の結果を大きく左右します。

まとめ

不同意性交等罪(旧:強制性交等罪)は、法改正により処罰範囲が広がり、同意の有無が厳しく問われるようになった重大な犯罪です。

法定刑の下限が「5年以上の拘禁刑」と重いため、原則として執行猶予がつかず、初犯であっても実刑判決となる可能性が高いのが現実です。

しかし、決して諦める必要はありません。

早期に被害者との示談を成立させ、適切な弁護活動を行うことで、執行猶予や不起訴処分を獲得できる可能性は残されています。

自身の未来を守るためには、一刻も早い対応が鍵となります。

警察から連絡が来た、あるいは逮捕されてしまった場合は、直ちに刑事事件に強い弁護士へご相談ください。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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