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更新日: 投稿日: 代表弁護士 中川 浩秀

業務委託契約とは?作成方法やテンプレート、請負契約との違いを解説

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記事目次

昨今、インターネットによる受発注の増加や働き方の多様化によって、業務委託という仕事の形態が増加しています。

業務委託は、企業同士の契約だけではなく、フリーランスなど個人との間でも契約されることも多いです。

業務委託契約は、雇用契約と異なり、自由な契約が結びやすく、多様なニーズに対応できる反面、契約内容をめぐって後日トラブルになりやすいという側面があります。

それだけに、業務委託契約を締結する際は、きちんとした契約書を作成することが重要です。

そこで今回は、業務委託契約とは何か、業務委託契約書を作成する際にどのような内容を盛り込むべきかなど、業務委託契約に関する注意点について解説します。

業務委託契約とはなにか?混同しやすい4つの契約を比較

1.業務委託契約とは

業務委託契約とは、自分の会社の仕事を外部に委託する契約のことをいいます。
もっとも、日本の法律には「業務委託契約」という規定はなく、法的性質は、「請負契約」「委任(準委任)契約」となります。「請負型」の業務委託契約は、物を作るなど仕事の完成を目的とする契約、「(準)委任型」の業務委託契約は、事務の処理を目的とする契約です。

業務委託契約では、仕事を頼む側(委託者)が、依頼を受ける側(受託者)に仕事を頼み、受託者がその仕事を自分の裁量と責任で行うのが特徴です。委託者から受託者に対する指揮命令権はありません。

2.請負契約との相違

請負契約は、民法第632条で「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と定められた契約です。

請負契約は、仕事を完成させて成果物を得ることを目的とした契約です。
請負契約には以下のような特徴があります。

  • 納期までに仕事を完成させて成果物を引き渡すこと
  • 請け負った側は労働力を提供するだけでなく設備などを提供して仕事を完成させること
  • 依頼者からの指揮命令を受けず仕事のプロセスは問題にならないこと
  • 成果物を引き渡して初めて報酬が発生すること

具体例として、会社がフリーランスのデザイナーとの間で商品デザインの作成に関する請負契約を締結した場合などが挙げられます。デザイナーは自分のPCや知見を用いて商品デザインを納期までに納入しなければならず、完成したデザインが依頼内容と異なる場合は修正をしない限り報酬を受け取れません。

3.委任契約との相違

委任契約は、民法643条で「委任者が法律行為をすることを受任者に委託し、受任者がこれを承諾することによって効果が生ずる。」と定められた契約です。

委任契約は、業務を行うことを目的とした契約です。
委任契約には以下のような特徴があります。

  • 仕事を行いさえすれば成果の優劣は問題にならないこと
  • 成果物がなくても報酬が発生すること
  • 引き受ける側には「善管注意義務」が課され、細心の注意が求められること

例えば、弁護士に依頼した場合に、法律相談などの弁護業務を行えば、裁判で負けたとしても一定の報酬を受け取ることができるという例があります。

委任契約に似た「準委任契約」は、法律行為を含まない委任契約をいいます。例えば、コンサルタントが企業に助言を行い、その助言に従っても企業が利益を得られなかったとしても基本的に報酬は支払われるといったタイプになります。

4.雇用契約との相違

雇用契約は、企業側(使用者)と従業員側(労働者)が労働契約を結び、労働者が会社の業務に従事して会社に貢献する代わりに、使用者が労働者に対して賃金を支払うことを約束する契約をいいます。
雇用契約には以下のような特徴があります。

  • 労働者は会社の指示監督の下で業務を行い、勤務場所や勤務時間が拘束されること
  • 報酬が、会社に提供する労務の対価という面があること

上記の特徴は、雇用契約の特徴であると同時に、業務委託契約との違いでもあります。

業務委託契約が利用される具体的な契約とは

業務委託契約を締結する際は、成果物の完成を目的とする場合は請負型の契約、業務の遂行を目的として成果を問わない場合は委任型の契約を選択します。
請負型の業務委託契約の具体例としては以下のような契約があります。

  • ホームページ作成契約
  • ITシステム構築契約
  • ソフトウェア開発契約
  • 商品デザイン作成契約

委任型の業務委託契約の具体例は、以下のような契約です。

  • 顧問契約
  • 社員研修契約
  • コンサルティング契約
  • 情報提供契約
  • ビル清掃契約

ただし、同じ「ソフトウェア開発契約」でも、ソフトウェア開発の条件を整えるなど相談がメインになる場合は委任型に、同じ「コンサルティング契約」でも一定の仕事の完成や成果を出すことを求めて依頼する場合は請負型になるなど、求める成果や業務内容によって選択するべき契約の型が異なることに注意が必要です。

成功報酬の支払い型別・業務委託契約の3類型

1.定額型の業務委託契約

毎月、一定額の報酬を支払うタイプの業務委託契約です。具体的には、清掃業務、保守点検業務、コンサルティング業務などで多いタイプです。

2.成果報酬型の業務委託契約

受託者があげた業務の成果に応じて、報酬が変わるタイプの業務委託契約です。具体的には、受注件数によって報酬が変わる営業代行業務、売上の増減に応じて報酬が変わる店舗運営委託業務などでよく用いられます。

3.単発業務型の業務委託契約

原則1回の業務を委託する際に、報酬の額を決めて支払うタイプの業務委託契約です。具体的には、社内研修業務、デザイン作成業務、商品開発業務などで多いタイプです。

企業側の業務委託契約のメリット

①人に関するコストの削減が期待できる

従業員を雇用する場合、給与の他、福利厚生や健康保険料、雇用保険料等の社会保険の負担が必要等、様々な費用がかかります。

しかし、業務委託契約であれば、契約で定める報酬以外に雇用の際にかかる上記のような費用等がかかりません。

また、業務委託であれば、業務の遂行のために必要なスキルを備えた人材を即戦力として活用することができるため、自社で教育、育成するコストも削減できるといえます。

②教育や管理コストの軽減が期待できる

業務委託契約では、委託先が受託された業務の管理や遂行に責任を持つことになります。

そのため、企業側にとっては、委託先の選定やその契約内容の決定等を適切に行っておけば、当該業務に関して自社の従業員の教育や進捗管理等のマネジメントを行う必要がなくなり、管理コストの軽減が期待できます。

③人材確保を柔軟に行うことができる

業務委託の場合、契約期間や業務内容等の条件を自由に調整できるため、短期的なプロジェクトの実施等のニーズに対応するために必要なときにのみ契約を結び、不要となれば解除するといったことができるという柔軟性もメリットの一つといえます。

また、繁忙期に業務委託も利用しながらマンパワーを確保することで自社の従業員の負担軽減も見込めます。

企業側の業務委託契約のデメリット

①自社へのノウハウの蓄積が困難

業務委託の場合、社外の専門家等に業務を委託するため、社内ではその業務に関する知識や経験値等が蓄積されにくくなります。

そのため、委託先との関係性や契約が切れると、企業側としてはその業務に関する専門知識や経験値等を喪失してしまうリスクがあります。

②業務委託費が高額になる可能性がある

業務委託によって人件費等のコストカットが期待できる反面、業務委託費が高額になることによってかえって経済的なコストが増加してしまうケースもあるため注意が必要です。

特に、高度な専門性が求められる業務を委託する場合、その難易度等にもよりますが業務委託費が高額になる傾向があります。

③品質管理が困難

業務委託の場合、委託した業務の品質は、基本的には委託先の業務の品質のレベルに左右されてしまいます。

そして、委託先とは雇用関係にないため、委託先を自社内と同程度に管理することも困難です。

よって、委託先を選定する段階で、その委託先が業務を適切に遂行できるか慎重に見極める必要があります。

労働者側の業務委託契約のメリット・デメリット

1. 労働者側の業務委託契約のメリット

時間や場所等の制約がなく自由に働くことができる

雇用ではなく業務委託という形をとることの大きなメリットの一つとして、基本的には働き方が自由である点があります。

業務委託は、委託された業務を契約通りに適切に遂行すれば良く、それを達成するために何時にどこで働くかという点は基本的には委託先の裁量に委ねられています。

なお、業務内容によっては例外的に特定の場所に常駐が必要な場合もあります。

働き方次第で収入アップが見込める

会社員であれば、基本的には固定給であり、どれほど業務量をこなしても目先の収入がそれに比例して大きく増えるといったことはあまりないと思います。

他方で、業務委託であれば、特定の会社の仕事のみをする必要はないため、自分の動きや能力次第で受注する案件数を増やしたりや受注の費用を決めたりすることができ、これによって自分の収入をアップさせることも見込めます。

専門知識やスキルを活用できる

会社員として働く場合、必ずしも個人の専門知識やスキルのみを活用した仕事ができる訳ではありませんし、会社の判断によっては、全く未経験かつ興味もない仕事をしなければならない可能性もあります。

他方で、業務委託であれば、基本的には仕事を自分で選ぶことができるため、自分の専門知識やスキルをフル活用して仕事をすることができます。

2. 労働者側の業務委託契約のデメリット

労働法による保護がない

雇用で働く会社員等は、労働基準法によって、労働時間や賃金、身分等について手厚く保護されています。

しかし、業務委託の場合、それらの保護がないため、いつでも働ける分かえって長時間労働になったり、完全な休日がとりにくく仕事とプライベートが混在しやすかったりする(仕事のオンオフがつきにくい)可能性はあります。

また、身分や収入についても何ら保障はないため、自分の仕事の状況によっては収入が大きく左右される可能性もあります。

雇用保険等に入れない

業務委託の場合、雇用保険に加入することができないため、たとえ仕事がなくなったとしても、雇用保険から失業給付を受けることができません。

そのため、予期せぬ怪我や病気、大口顧客との取引停止等によって収入を得ることができなくなるおそれがあります。

また、厚生年金にも加入できないため、将来的に受給することができる年金額が一般的な会社員よりも少なくなる可能性もあります。

こうしたリスクを軽減するためには、収入減に備えて私的に保険に入ること等も検討すると良いでしょう。

責任を自分でとる必要がある

取引先と業務委託契約を締結する場合、契約の中で具体的な業務内容や納期等が定められており、当然ながらこれに従って業務を実施する必要があります。

そして、業務の実施に際して契約違反があったり、不適切な点があって取引先に何らかの損害が生じたような場合、その責任は基本的には業務の委託を受けた個人が負うこととなり、場合によっては取引先に対してその損害を賠償しなければならない可能性もあります。

このように、何かあった際の責任を自分でとらなければならないという点もデメリットの一つといえます。

業務委託契約を結ぶ際の5つの注意点

1.業務委託契約の要素

業務委託契約を結ぶ際は、請負型か委任型のどちらの契約を選ぶのか、求める仕事の目的を踏まえて慎重に決定しましょう。

業務委託契約は、外部に任せられる仕事を外注することで、社内の人材は会社の本質的業務に集中できるようにするというメリットがあります。そのため、請負型・委任型を問わず、委託した業務の管理やフォローをするために社員が余計な負担を負うようでは本末転倒です。

さらに、業務委託契約では、業務遂行のプロセスは任せることになるため、依頼する業務の遂行に必要なデータを提供する必要があります。会社の本質に関わるデータを安易に渡さないよう、依頼する業務の内容は事前に精査しておきましょう。

2.業務委託契約を結ぶ相手

業務委託契約は、雇用契約と異なり、勤務条件や業務遂行のプロセスの指揮監督をすることができません。そのため、外注する際の契約相手は次のことに注意して選ぶことをおすすめします。

①請負型の業務委託契約

請負契約は、成果物が完成しないと報酬が発生せず、修正が必要な場合は、受託者が修正する義務を負います。しかし、いい加減な契約相手だと、納期を守らなかったり、修正への対応が遅かったりすることも考えられます。
業務遂行のプロセスを監督できないだけに、迅速・丁寧に対応する相手を選びましょう。

②委任型の業務委託契約

委任契約は、事務処理を依頼するにあたり、一定の情報を提供することが避けられません。そのため、委託した会社の守秘義務をきちんと履行すること、情報漏洩のリスクがないことが重要です。また、請負と異なり、成果物の完成がなくても報酬が発生するので、業務の過程で手を抜かずに真摯に業務を行う相手を選びましょう。

3.請負か委任か、業務委託の性質別の責任の範囲

業務委託契約では、契約書のタイトルよりも、その契約内容によって、請負型か委託型か判断されます。そして、どちらのタイプかによって責任の範囲が異なります

請負型の場合、受託者は成果物を引き渡すまで報酬を請求できず、仕事にミスや欠陥があった場合には、委託者に対して修理や損害賠償、契約解除の責めを負う「瑕疵担保責任」を負います。一方、委託型の場合は、受託者は「善管注意義務」を負うものの、業務を遂行すれば委託者に報酬を請求することができます。

このように、業務委託契約では、業務型か委任型かで責任が異なるので、求める業務がどのようなものなのかを精査し、双方の認識を一致させて契約を結ぶことが重要になります。

4.偽装請負の注意点

特に請負型の業務委託契約の場合、仕事を遂行するプロセスは、仕事をする場所を含めて受託者の自由です。しかし、業務の性質上、依頼した会社内に常駐して仕事を行う場合もあります。その場合、委託者側はつい指示命令を出してしまいがちですが、指示の内容によっては指揮監督関係があると認められる可能性があります。受託者が委託者の指揮監督下にあるとされると、実質的な雇用関係にあるとされ「偽装請負」として問題になるおそれがあります。

雇用関係であれば、労働者は、労働基準法などの保護を受け、雇用保険・健康保険・労災保険などの社会保険制度の利用や、年次有給休暇の取得、残業代の請求などの権利を持ち、強い身分保障を受けることができます。しかし、業務委託契約では、労働者性がないため、このような保護を受けません。偽装請負は、実際は労働者と評価されるのに、法の保護を受けない点が、労働者保護の観点から問題視されています。

過去の裁判例では、会社の子会社にパートとして雇用され、業務委託契約に基づいて親会社で業務に従事した原告が、子会社と親会社の請負契約終了を理由に雇止めされたケースで、原告は実質的には親会社の指揮監督下で業務に従事して親会社が賃金を払っていたと言え、勤務開始時点で原告と親会社の間に黙示の労働契約が成立していたとして、原告は親会社に労働契約上の権利を有する地位にあると判断されましたケースがあります(ナブテスコ事件 神戸地明石支部平成17年7月22日判決)。
偽装請負に当たると判断されると、企業側が処罰を受けることもあるので注意しましょう。

5.再委託の注意点

業務委託契約が委任型の場合は、業務の委託を受けた受託者は自分でその業務を遂行しなければならず、他人に回す再委託は認められないとされています。
一方、業務委託契約が請負型の場合は、受託者は再度別の相手にその業務を委託できるとされています。しかし、業務委託契約は受託者のスキルや実績も、業務を任せる上で大きな意味を持つことが少なくありません。請負型の業務委託契約を結ぶ場合は、契約書で再委託を禁止する旨を明記しておくなど、対応をしておきましょう。

業務委託契約書の作成方法とテンプレート

以下では、業務委託契約書の作成方法について6つのステップに分けて説明します。

①委託する業務の内容と範囲を定める

委託する業務の内容と範囲を明確化する必要があります。

その際、後のトラブルを防止するために、契約書では複数の解釈ができるような文言で条項を作成しないように必要に応じて用語の定義規程を入れる等して取り決め内容をクリアにしておくよう注意して下さい。

②契約の期間と条件を定める

契約期間がいつからいつまでなのか、終了後に延長することができるか否か等、契約の期間や条件を明確にします。

特に、契約期間を延長する場合や契約を解除して早期終了となった場合等、イレギュラーな場合に備えて条項を検討しておくことが重要です。

③業務委託の費用と支払条件を定める

委託する業務の内容や範囲、契約の期間等が決まれば、それを踏まえて業務委託の費用やその支払方法、請求書の提出期限等を具体的に決めます。

金銭に関する事項は契約当事者双方にとって重要な事項なので、疑義が生じないように明確かつ詳細に取り決めましょう。

④機密情報や知的財産権の取り扱いに関する事項を定める

業務委託に関して発生する機密情報や業務の成果物の知的財産権の帰属等についても事前に明確に取り決めをしておくようにしましょう。

⑤将来的に紛争が生じた場合の解決方法について定める

万が一紛争が生じた場合にどのように解決するか、裁判をする場合はどこの裁判所を管轄とするか等を念のため定めておきましょう。

⑥契約を終了させるための条件について定める

契約期間満了以外にどのような場合に契約が終了するのか、契約を終了させる場合の手続、契約終了時の報告内容や期限、業務の引継ぎに関する事項等を定め、契約終了となった場合にも円滑に対応できるような条項を設けておきましょう。

業務委託契約書のテンプレート

具体的な業務委託契約書についてはインターネット上で各種テンプレートを容易に見つけることができますし、国としても厚生労働省等で業務委託契約書の書式を公開しているので、これらを参考にして下さい。

また、テンプレートではカバーしきれない個別具体的な疑問点等があれば、是非弁護士に相談してみてください。

業務委託契約書に記載すべき12のポイントと注意点

1.業務委託契約の目的

委託者が、受託者に業務の遂行を委託するための契約だということを明記します。

2.業務委託契約の内容と履行の方法

委託する業務の内容や工程については、できるだけ具体的に明記して、受託者が守るべき手順やルールについて記載しておきましょう。また、特殊な業務については追加資料をつけるなどしておきましょう。

3.業務の再委託について

受託者が、委託された業務を再委託できるかどうかを記載しましょう。特に、請負型の業務委託契約で、受託者の技能や実績を重視する場合は、再委託を禁止する旨を明記しておきます。

4.業務委託契約の期間や更新の有無

業務委託契約の期間、契約期間満了時に自動更新されるかどうかについて記載します。

5.報酬

報酬の金額と内訳、支払時期と支払方法を記載します。成果物1つにつき何円、1日あたり何円というように、算定方法についてできるだけ詳細に決めておきましょう。

また、請負契約の場合は、民法第632条で報酬の支払いが契約の必須の要素とされる一方、原料費や光熱費など業務の遂行にかかった費用は受託者が負担するのが原則です。

しかし、不測の事態で想定より多くの費用がかかった場合はトラブルに発展しやすいので、その点も記載しておくとよいでしょう。

6.業務中に発生した権利

委託した業務で発生した成果物が、いつ、だれに帰属するのかを明記します。形があるものについては引き渡し時期と引き渡し相手を、形のない権利などについては受託者が契約後に利用できるかなどについても記載します。特に、著作権等の知的財産権は、契約後に問題となりやすいので、もれなく記載しておきましょう。

7.禁止事項・守秘義務

業務遂行に際しての、禁止事項について記載します。また、委託者が受託者に開示した情報等について、秘密保持を求める旨も明記しましょう。秘密保持については、業務委託契約書とは別に秘密保持契約書を作成し、万が一違反した場合の損害賠償についても厳しく規定するケースも少なくありません。

8.損害賠償請求について

委託者・受託者に契約違反があった場合等の損害賠償については明記しておく必要があります。契約書に損害賠償の記載がない場合は、委託者が契約解除した場合に委託者側に損害賠償の責任が発生する恐れがあります

9.契約の解除

委託者・受託者に契約違反があった場合等の契約の解除について明記します。

請負型の業務委託契約の場合は、委託者は、「仕事を完成しない間」であれば自由に契約の解除ができます(民法第641条)。また、成果物に欠陥があり、契約の目的を達成できない場合も原則契約解除が可能です(同法第635条)。一方、受託者側からは、委託者が「破産手続き開始を受けたとき」しか解除できません(同法第642条1項)。

委任型の業務委託契約の場合は、委託者・受託者双方がいつでも契約を解除できます(同法第651条1項)。

10.裁判所の合意管轄

業務委託契約についてトラブルが発生し、裁判に発展した場合にどこの裁判所で審理するかについて記載します。

11.反社会的勢力排除条例の確認

一方当事者が反社会的勢力に属している場合、他方の当事者は契約を解除することができるという条項です。

各地での暴力団排除条例の施行に伴い、業務委託契約に限らず、ほとんどすべての契約書に盛り込まれるようになったものです。

12.契約不適合責任の期間の調整

請負型の業務委託契約の場合、業務の成果等に契約書に記載した内容との齟齬があった場合、契約不適合責任に基づいて委託者が受託者に対してやり直しや損害賠償を請求することができる可能性があるため、その責任の期間等を記載します。

業務委託契約書の印紙税

業務委託契約書には、その内容によって印紙税が課税されるものがあります。

印紙税が課税される契約書については、契約書を完成させる際に収入印紙(公的な文書や契約書に貼付される切手のようなもの)を貼付する等して印紙税を納める必要があります。

どのような業務委託契約書が課税の対象となるかについては、印紙税法という法律に定められています。

①第2号文書

印紙税法上、請負契約に関する契約書は「第2号文書」と呼ばれ、印紙税の課税対象となります。

そして、業務委託契約書の内容が仕事の完成(例えば何らかの成果物を納品すること)を目的とするものであれば、それは請負契約に関する契約書であるとみなされ、印紙税が課税されることが一般的です。

この場合の印紙税の金額は、契約書に記載されている金額等によって段階的に決められています。

②第7号文書

印紙税法上、一定期間以上特定の取引を行うことを内容とする契約書(継続的取引の基本となる契約書)は、「第7号文書」として印紙税の課税対象となることがあります。

業務委託契約書については、その内容が請負に関するものであって、3か月を超えて継続した取引を行うことを想定しているものであればこれに該当する可能性があります。

第7号文書に該当する場合、収入印紙を貼付すること等により4,000円の印紙税を納付する必要があります。

課税対象ではない業務委託契約

請負型の業務委託契約については、既述の通り、印紙税の課税対象となります。

他方で、委任型の業務委託契約については、その契約書は不課税文書となり、印紙税が課税されないため、収入印紙の貼付も不要です。

このように、業務委託契約書と題する契約書の中でも、契約内容によって印紙税の課税の有無に違いがあるので注意が必要です。

業務委託契約の際の源泉徴収

源泉徴収とは、報酬等を支払う者が、その支払時にあらかじめ税金分を差し引いて納税する仕組みのことです。

源泉徴収は、報酬等を支払う者が税務当局に代わって税金を徴収・納付することになるため、支払いを受ける側としては、報酬等を受け取った時点で既に一部の税金が差し引かれている状態となります。

そこで、例えば個人事業主であれば、確定申告によって実際に必要な納税額と源泉徴収額との差額について調整する必要があります。

源泉徴収の対象

源泉徴収の対象とされるのは、以下のいずれかに該当するものであり、かつ支払いを受ける者が個人である場合です。

  1. 原稿料や講演料等
  2. 弁護士や司法書士、税理士など特定の資格を持つ人に支払う報酬
  3. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  4. プロ野球、プロサッカー、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬
  5. 芸能人や芸能プロダクション等を営む個人に支払う報酬
  6. ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするホステスやコンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬
  7. 契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  8. 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

源泉徴収の税額と納付の方法

源泉徴収の税率は、支払う報酬等の内容や金額に応じて決められています。

例えば、弁護士や司法書士、税理士など特定の資格を持つ人に支払う報酬については、「支払金額×10.21%(ただし、支払金額が100万円を超える部分については20.42%)」で計算することとなります。

源泉徴収税は、原則として、報酬等を支払った月の翌月10日までに管轄の税務署等にて納付する必要があり、納付が遅れると延滞金の支払いが発生する可能性もあるため注意が必要です。

業務委託契約書の作成を弁護士に相談するメリット・デメリット

業務委託契約書を作成する際は、まず業務の内容が請負型か委任型かを見極め、その上で責任の範囲を明確にしなければなりません。

インターネットでダウンロードできる雛形をそのまま利用すると、報酬を想定より多く支払わなければいけなくなったり、成果物の権利を取られたりする恐れがあります。

弁護士に業務委託契約書の作成を相談することで、まずは、ご自身の委託する業務の性質を明らかにし、それに沿った契約書を作成できるメリットがあります。

また、生じた成果物の権利の所在を明確にすることで、後で成果物の価値が上がった場合の財産的価値を保全し、情報漏洩を防ぐことも期待できます。

さらに、損害賠償や裁判の合意管轄など、将来のリスクに備えた対策を取っておくことも可能です。

反面、弁護士に業務委託契約書の作成を相談するデメリットとしては、費用がかかることがあげられます。

定型的な契約書もあれば、非定型的で複雑な契約書もあるため、契約書の作成にかかる弁護士費用は、数万円から数十万円程度までと、様々です。

まずは、法律相談等で、弁護士に作成したい契約書の概要を伝え、弁護士費用の見積りを出してもらうことをおすすめします。

業務委託契約書についてのご相談は「東京スタートアップ法律事務所」へ

今回は、業務委託契約書に関してご説明しました。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な経験に基づいて、業務委託契約書の作成やご相談に対応しております。

また、契約書の作成にとどまらず、実際に業務委託契約の関係にある当事者間でのトラブルが生じた場合の対応に関する相談等もございましたら、是非お気軽にご連絡下さい。

まとめ

業務委託契約は、委託者側からすれば、長期・短期を問わず、ニーズに応じて外部に業務を委託することで、本業をスムーズに遂行することができるというメリットがあります。

他方、受託者側からすれば自由度の高い働き方で報酬を得ることができるというメリットがあります。

両者にとって自由度が高い契約だけに、契約の合意内容に漏れがあると、後々トラブルになりかねません。

円滑な企業運営のために、業務委託契約でお悩みの方は、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

私たち東京スタートアップ法律事務所では、業務委託契約書のみならず、お客様のニーズに合った、様々な契約書を作成しております。

契約書作成でお悩みの方は、是非、ご相談ください。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社