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更新日: 投稿日: 弁護士 高島 宏彰

解雇予告通知書のひな型|アルバイト・試用期間・即時解雇の場合の対応も解説

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従業員を解雇する際は30日前に予告をしなければならないというルールをご存知の経営者の方は多いかと思います。しかし、実際にどのように解雇予告をすればいいのか、書面はどう書けばいいのかなど、実際の対応でお悩みの方は少なくありません。

新型コロナウイルスの影響による業績不振で従業員の解雇を検討している経営者の方もいらっしゃるかと思います。2020年6月には、厚生労働省が新型コロナウイルスに関連した解雇・雇止めが、見込みを含めて約2万5000人に上ると発表しました。解雇は非常にトラブルになりやすい類型で、経営努力を尽くしても避けられない解雇であっても問題になる可能性があります。ケースによっては、数百万円から1000万円を超えるような損害賠償の支払いが求められることもあります。

今回は、解雇に関するトラブルを避けるための解雇予告通知書の役割や書き方について、テンプレートを示して解説します。

解雇予告通知書とは

会社が従業員を解雇する場合、少なくとも30日前に従業員に対して解雇する旨を伝えるか、不足する日数分の解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法第20条)。この解雇する旨を伝えることを「解雇予告」といい、解雇予告を書面に記したものが「解雇予告通知書」です。

解雇とは、会社が従業員との雇用契約を一方的に解約するものなので、最もトラブルになりやすい場面です。法律上は、解雇・解雇予告ともに口頭で行っても構わないのですが、トラブルになりやすいだけに、会社の意図が従業員に正確に伝わるよう、解雇予告通知書は作成して交付しておくべきです。解雇予告通知書を作成することにより、後日、不当解雇として争いになった場合に会社の対応を証拠化することが可能です。

なお、解雇予告は、アルバイトやパートであっても原則として必要です(例外的に、2か月以内の期間雇用者や入社日から14日以内の試用期間中の者の場合は不要です)。アルバイトやパート職員だからといって、すぐに解雇できるわけではないのでご注意ください。

解雇予告通知書が不要な3つの場合

解雇予告通知書は、解雇に関するトラブルを防ぐために大切な役割を果たし、トラブルに発展した際も有力な証拠になりますが、ケースによっては不要な場合があります。

1.解雇予告手当を払う場合

会社が従業員を解雇する際は、原則として少なくとも30日前に従業員に解雇予告を行う必要があります(同法第20条)。ただし、「解雇予告手当」として30日分の賃金を支払う場合は、解雇予告通知書は不要です。

「解雇予告手当」は、30日前の解雇予告日から解雇日までの日数を引いた期間に平均賃金を掛けたものをいいます。平均賃金は、3か月前から現在まで支払済みの賞与を除く給与総額を総日数で割って算出します。

30日分の解雇予告手当を支払えば、会社は解雇予告通知書を出さずに従業員を即日解雇することも可能ですし、解雇日まで30日を切っている場合は、30日から解雇日までの日数を引いた分の解雇予告手当を支払うことで解雇することができます。

2.従業員側に問題がある場合

従業員に懲戒解雇に該当する非違行為が認められたことにより解雇する場合は、労働者の責めに帰すべき事由に基づく解雇として、解雇予告手当を支払わずに即時解雇が可能な場合があり、解雇予告通知書も不要です(労働基準法第20条1項但書)。

ただし、就業規則などの懲戒解雇事由に該当するだけでは不十分で、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受ける必要があります。解雇予告除外認定は、従業員の懲戒解雇が決定した後、所轄の労働基準監督署に申請を行い、労働基準監督署の調査を経て認められます。

解雇予告除外認定が受けられるのは以下の2つのいずれかに該当する場合です。

  • 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合
  • 労働者(従業員)の責めに帰すべき事由がある場合

後者については「予告期間を置かずに即時解雇されてもやむを得ないと認められるほどに重大な職務規律違反又は背信行為がある」(東京地方裁判所平成14年11月11日判決)といえるようなケースのみとされています。具体的には以下のような場合が該当します。

  • 職場で犯罪行為を行った
  • 2週間以上の無断欠勤が続き、出勤督促に応じない
  • 採用時に重大な経歴詐称があった
  • 職場規律を乱して他の従業員にも悪影響を及ぼした
  • 数回にわたる注意を受けても態度を改めない
  • 他の会社への転職

3.試用期間や期間雇用の場合

以下のような従業員は解雇予告義務の対象外となります(同法第21条)

  • 日日雇入れられる者(1か月を超えて引き続き使用される場合は除く)
  • 2か月以内の期間を定めて使用される者(契約更新されて継続使用される場合は除く)
  • 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(同上)
  • 試用期間中の者(14日を超える場合は除く)

つまり、日雇い労働者や期間従業員、入社日から14日以内の試用期間中の従業員の場合は、解雇予告通知書の交付や解雇予告手当の支払いを行わずに解雇することが可能です。
ただし、解雇を明らかにするために解雇の際に「解雇通知書」は作成して交付します。

解雇予告通知書の書き方とテンプレート使用の場合の注意点

1.解雇予告通知書に書くべき7つのこと

解雇予告通知書の書き方については、法律で定められているわけではありません。しかし、解雇をめぐって後日トラブルが発生することを防ぐために、以下の7点を含めるのが通常です。

  • 解雇する従業員の氏名
  • 解雇予告通知書の作成日(手渡す場合は交付する日、郵送する場合は発送日)
  • 会社名、代表者氏名(押印)
  • 解雇する日
  • 解雇する旨の意思表示
  • 解雇する理由
  • 就業規則がある場合は該当する条文

解雇予告通知書を作成する際は、解雇する日が解雇予告通知日から30日以上あることに注意が必要です。30日を切る場合は、その分の解雇予告手当を支払う必要があります。なお、30日というのは、従業員が解雇予告通知書を受領した日の翌日からカウントし、会社の休日も含めます。

また、解雇の理由については、該当する就業規則の条文と合わせて記載する必要があります。解雇の理由は「客観的に合理的」で「社会通念上相当」であることが必要です。解雇理由に当たる勤怠の状況や、解雇の先例などを事前に調べておきましょう。
解雇予告通知書を作成したら、コピーを取って一通を会社で保管します。

2.解雇予告通知書のひな型

実際の解雇通知書は、以下のテンプレートを参考にして下さい。

●●●● 殿

●●年●月●日
株式会社●●●●●
代表取締役●●●●印
解雇予告通知

このたび、下記理由により、貴殿を●年●月●日付で解雇いたしますので、労働基準法第20条に基づき、ここに解雇の予告を通知いたします。

就業規則第●条●号に定める「●●●●●●●●●●●●」に該当するため。

以上

従業員を即時解雇したい場合の対処方法

1.解雇予告手当を支払う場合

従業員を即時解雇したい場合は、まず、解雇予告手当を支払う方法があります。この場合は、即時解雇を申し出ると同時に「解雇予告手当支払通知書」を交付しましょう。解雇予告手当支払通知書には、対象者の氏名や解雇日、解雇予告手当の支払期日、支給額と計算方法、支払方法等を記載します。

2.解雇予告手当を支払いたくない場合

違法行為をするなどした従業員を懲戒解雇で即時解雇したい、解雇予告手当も支払いたくないという場合には、労働基準監督署の「解雇予告除外認定」を受けることで解雇できます。懲戒解雇でも、少なくとも30日前の解雇予告か解雇予告手当の支払いが必要ですが、解雇予告除外認定を受けることにより、解雇予告手当の支払いなく即時解雇することが可能です。

即時解雇するには、就業規則に懲戒解雇の規定があり、解雇理由がその規定に該当することが前提です。加えて、解雇予告除外認定を受けるためには、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」か「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」のいずれかに該当する必要があるので、確認しておきましょう。

解雇予告除外認定は、従業員に解雇通知をする前に受けるのがベストですが、懲戒解雇により即時解雇を伝えた後で認定を受けても構いません。この場合は、即時解雇を伝えた日に遡って効果が発生します。通常、労働基準監督署が解雇予告除外認定の申請を受理してから認定されるまでおよそ2週間を要します。

もし、解雇予告除外認定を受けられなかったとしても、解雇が無効になるわけではありません。ただし、30日前の解雇予告か解雇予告手当の支払いが必要となるので、即時解雇した従業員から解雇予告手当の支払を請求される可能性があります。

解雇予告通知書の交付方法

実際に従業員に解雇予告通知書を交付するには、以下のような方法があります。それぞれのメリット・デメリットを把握して、状況によって交付方法を選択しましょう。

1.口頭で解雇予告通知する

解雇予告通知は、法律上は口頭でも有効に行うことができます。
しかし、口頭で解雇予告通知をしただけでは、解雇予告をしたことや解雇日に関して証拠化することが難しく、後々トラブルになりやすいというデメリットがあります。緊急で口頭で解雇予告通知をした場合でも、事後的に解雇予告通知書を作成し、交付しておきましょう。

なお、法律では、従業員から要望があった場合は、解雇理由について書面で交付する義務が定められています(同法第22条)。そのため、従業員が求めた場合は、口頭では足りず、書面を交付しなければならないのでご注意ください。

2.メールで解雇予告通知する

昨今、ビジネスでは書面よりもメールでやり取りをすることが大半です。そこで、解雇予告通知もメールで送信することが考えられます。

解雇予告通知はメールでも行うことができ、従業員がメールを開封したか、メールが配信されたことを知り得た時点で相手に届いたものとみなされます。メールによる解雇予告通知は、迅速に解雇の意思を伝えられるメリットがある反面、プロバイダの問題でメールが届かない、迷惑メールフォルダに振り分けられ気付かないなど、従業員にメールが認識されない可能性があるというデメリットがあります。

そのため、確実に解雇予告通知をするためには、メール送付する場合は改変されないようにPDF等で添付する、メール送付だけでなく別の方法でも解雇予告通知をする等の工夫をすることをお勧めします。

3.書面を送って解雇予告通知する

解雇予告通知書を郵送する場合は、書面が「相手の支配領域に入り、一般の取引通念に照らして相手が知り得る状態になったとき」に相手に到達したものとして効力が発生すると考えるのが実務の運用です(最高裁昭和36年4月20日判決)。

解雇予告通知書が届いた日を明らかにするためには、普通郵便ではなく配達証明付内容証明郵便で送ることをお勧めします。内容証明郵便は、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明してくれる郵便です。内容証明郵便は、郵便局員が手渡しする運用ですが、もし従業員が受取を拒否しても、受取拒否の時点か、郵便局で手紙を留めおく期間が満了した時点で到達したものとみなすと考えるのが通常です(東京地方裁判所平成14年4月22日判決)。

なお、解雇予告通知書を送る場合は、通知書の解雇日が、到達した日の30日以上先の日付であることが必要です。そのため、従業員に届くまでにかかる日数も考慮して解雇する日を記載しましょう。

4.書面を手渡して解雇予告通知する

従業員が出社している場合、解雇予告通知書を作成し、手渡しで交付する方法が一般的です。交付による解雇予告通知は、会社の解雇意思や解雇理由などを従業員に直接説明できるというメリットがあります。反面、手渡しだけだと、解雇予告通知の交付日がいつだったかを証拠化できないというデメリットがあります。そのため、解雇予告通知書を交付する際、解雇予告通知書のコピーに受領日と従業員のサイン(自署)の記載を求めましょう。

なお、解雇予告通知書を従業員に手渡しする場合は、解雇日が交付日の30日以上先の日であることが必要なので、ご確認ください。

解雇予告通知書について弁護士に相談するメリット・デメリット

従業員を解雇する際の解雇予告通知書の作成や交付は、解雇理由の検討や即時解雇の可能性など、様々な事情を考慮して行う必要があります。このようなケースで、弁護士に解雇予告通知書について相談するメリット・デメリットとしては、以下のように考えることができます。

まず、弁護士に相談するメリットとしては、今回の解雇について、解雇予告通知書が必要なものか、即時解雇が可能か否かを正確に判断するためのアドバイスを受けられる点があります。即時解雇する場合は、労働基準監督署での除外認定手続についても相談が可能です。実際に解雇予告通知書を作成する場合、書面のリーガルチェックを受けたり、手続きの適法性の判断をしてもらえる点も、大きな安心につながると言えるでしょう。解雇は、会社と従業員の間でトラブルが生じやすい場面なだけに、企業法務に強い弁護士に相談するメリットは、トラブルに発展した場合の対応も任せられる点でも大きいと言えるのではないでしょうか。

一方で、弁護士に相談するデメリットとしては、費用がかかることが挙げられます。まず、弁護士に法律相談を依頼した場合の相談料は、1時間1万円+税というのが目安になります。また、今後の継続的な対応をしてもらうために会社の顧問を依頼する場合の顧問料は会社の規模やサポート内容により大きく異なりますが、一般的には月額で5万円~30万円程度です。

弁護士に相談・依頼するには費用がかかりますが、解雇をめぐるトラブルで会社が損害賠償責任を負う場合は、数百万から一千万円を超えるケースも珍しくないことを考慮すると、適正なリスクヘッジに必要な費用といえます。

まとめ

今回は、従業員を解雇する際の解雇予告通知書の書き方やひな型、解雇予告通知書が不要な即時解雇のケースなどについて解説しました。

解雇は、後日トラブルになりやすい類型なだけに、逐一会社の対応を証拠化して訴訟等に発展した場合に有利に交渉できるよう備えておくことが大切です。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験に基づき、解雇理由に応じた解雇予告通知書の作成のサポートなどを行っております。また、解雇予告通知書の作成にとどまらず、懲戒解雇や整理解雇の問題、後日トラブルに発展した場合の対応など、全面的なサポートが可能です。解雇予告通知書をはじめとするご相談がございましたら、お気軽にご連絡いただければと思います。

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執筆者 弁護士高島 宏彰 神奈川県弁護士会
2012年筑波大学法科大学院卒。2017年弁護士登録。BtoC、CtoC取引等の法分野(消費者契約法・特定商取引法・資金決済法等)に明るく、企業法務全般に取り組んでいる。