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更新日: 投稿日: 代表弁護士 中川 浩秀

資金調達時に弁護士のサポートを受けるメリットと注意点・選び方も解説

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会社を創業し、事業を軌道に乗せるためには、資金調達を成功させることが大切なポイントとなります。最近は資金調達を成功させるために弁護士のサポートを受ける企業も増えていますが、一方で「資金調達の際に弁護士のサポートが必要と言われる理由や弁護士に依頼するメリットがよくわからない」、「弁護士のサポートを受けないと具体的にどのようなリスクがあるのかイメージできない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、資金調達の際に弁護士のサポートが必要な理由、出資を受ける際の潜在的なリスクや最低限知っておくべきポイント、弁護士のサポートを受けるメリット、弁護士選びのポイントと注意点などについて解説します。

【解説動画】TSL代表弁護士、中川が資金調達時に弁護士のサポートを受けるメリットについて解説

資金調達の際に弁護士のサポートが必要な理由

企業が資金調達を行う際の主な手段として、大きく分けると融資と出資の2種類があります。融資の場合、調達できる金額に限度があり、また返済が必要という大きな制約があるため、できれば出資を受けたいという方も多いのではないでしょうか。ただし、出資を受ける場合は、出資者に会社の持分を持たせることになるため、リスクも伴います。出資を受ける場合のリスクの概要やリスクを回避する方法について説明します。

1.出資を受ける場合のリスク

投資家から出資を受ける最大のメリットは、融資と違い、返済の必要がないことです。また、その会社に対する期待値によっては数千万円以上という多額の資金を調達できる可能性があることも魅力の一つです。

一方で、出資を行った投資家は一定割合の株式を取得して株主となるため、基本的には出資比率に応じた議決権を持つことになります。議決権を持つということは、会社の経営に関する権限を持つということです。発言権を持つ投資家の意見を無視することはできないので、経営の自由を奪われるリスクがあるということをしっかり認識しておきましょう。

2.不利な投資契約を回避する方法

投資家から出資を受ける際、投資契約を締結するのが通常です。投資契約書には、主に投資家が株式を取得する際の投資実行条件などが定められています。

投資契約書の内容次第では、投資家は会社法上の株主が通常取得する権利以上の権利を得ることが可能です。投資家と出資を受ける企業では時として実質的に利害が相反する関係にあるので、投資家側にとって有利な契約は、企業側にとっては不利な契約となる場合が多いです。起業家・経営者の多くは投資契約書に関する予備知識がほとんどないため、自身にとって不利な内容を見抜けないことも珍しくはありません。不利な契約を回避するためにも、潜在的なリスクを予見できる専門家によるサポートを受けると安心です。

出資を受ける際の潜在的なリスク

投資家は、経営者にとって、経営者をサポートして事業の発展に貢献してくれる頼れるパートナーのような存在です。良い投資家に巡り合うことができれば、事業の成長が加速度的に上がる場合もあります。一方で、出資を受ける際にはリスクが伴います。以下では、出資を受ける際に知っておきたい潜在的なリスクについて説明します。

1.出資を受ける際には必ずリスクが伴う

成長の可能性を秘めた企業でも、投資家選びを間違えてしまうと、投資契約の存在が支障となって、自由な意思決定ができなくなり事業の発展を妨げてしまう可能性があります。出資を受けるということは、経営について口出しされるリスクを伴うことを理解しましょう。

出資を受けたことが原因で、本来やりたかったビジネスの自由な展開や柔軟な軌道修正をしづらくなることは珍しいことではありません。悪意を持つ投資家から出資を受けると、最悪の場合、会社を乗っ取られる可能性もあるので注意が必要です。

2.経営陣の持株比率の目安

一般的に全体の過半数を超える株式を持つと、ほとんどの事柄を決定できると言われています。つまり、出資者の出資比率が5割を超えると、重要な経営判断において出資者の承認が必要になり、自由な経営の妨げとなります。そのため、経営陣が過半数の株式を保有することは非常に大切です。

ただし、過半数の株式を保有しさえすれば安泰というわけではありません。会社に対する訴えの提起など、少数の株式しか保有していなくても行使できる権利はあります。順調に事業を発展させるためには、たった1株の出資者だとしても、誰に出資してもらうかは慎重に吟味するようにしましょう。

 

投資契約書のチェックポイント

投資契約書は、一から作成するのではなく、投資家が所有している雛形を元に加筆・修正して作成することが多いです。投資家が保有している雛形は投資家に有利な内容となっている可能性が高く、また加筆・修正する際に投資家と企業が合意した重要な内容が漏れてしまう可能性もあるので、内容をしっかりと確認する必要があります。初めて投資契約書を目にする企業側にとっては、難解な条項が並んでいる投資契約を隈なくチェックすることは難しいかもしれません。以下では、最低限確認しておきたい重要なポイントについて説明します。

1. 経営の自由が制限される規定がないか

投資契約書をチェックする際、必ず確認していただきたいのが、経営の自由が制限される規定が含まれていないかという点です。

例えば、資金の使途に関する条項で当初の事業計画に沿った目的のみに資金を使用できると定められている場合、事業計画書の内容が変更されると資金の使用が認められなくなる可能性もあります。途中で経営方針に関する軌道修正が必要となり、事業計画書のアップデートを行うケースは珍しいことではありません。このような縛りがあると柔軟な経営ができなくなり、事業の発展が妨げられてしまうリスクがあります。
また、経営に関する意思決定に対して投資家の承諾を必要とするという規定が含まれていないかもチェックしましょう。意思決定の度に投資家の承諾が必要となると、事業内容を一部変更することも自由にできなくなり、経営の自由が制限されてしまいます。

2. 過剰な責任や義務が規定されていないか

投資契約書の規定の中に、過度な負担となる責任や義務が定められている場合もあります。例えば、四半期ごとの財務諸表の提出義務などは設立して間もない企業にとっては過度な負担となります。
また、表明保証条項や誓約条項などに、将来的に訴訟の可能性がないことなど予見が困難で、遵守することのできない可能性がある条項が含まれているケースもあります。
将来起こりうるリスクも想定して、過剰な責任や義務が課されていないか、しっかり確認することが大切です。

また、稀なケースではありますが、一定期間経過後に資金を返済する内容の規定が含まれていることがあります。出資なので、本来は返済義務がないはずですので、このような条項が含まれている場合、契約自体を白紙に戻すことも検討するべきです。
ベンチャー企業が投資契約を締結する際のチェックポイントや注意点については、こちらの記事でも解説していますので、参考にしてみてください。

資本政策の重要性

資本政策というのは、資金調達を実現するための具体的な施策のことです。資本政策は、経営の自由を確保しつつ資金調達を成功させるために非常に重要ですが、その重要性を十分に認識できていない経営者も多いようです。資本政策がなぜそれほど重要なのか、その理由について説明します。

1.投資家の資本政策を無条件に受け入れるのは危険

経営者サイドでは特に資本政策を立案することなく、投資家から提示された資本政策を無条件で受け入れるケースが少なくはありません。投資家が立案した資本政策は、投資家にとって有利で、企業にとっては不利な内容になっている場合があるため、注意が必要です。特に、ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受ける場合、投資家側がベンチャーキャピタルの利回りを最大化するために資本政策を立案している可能性も高いといえます。

2.リスクを回避するためのポイント

資本政策におけるリスクを回避するために最も重要なポイントは、経営陣の持株比率を一定以上確保することです。前述の通り、出資者の出資比率が5割を超えると、重要な経営判断に出資者からの承認が必要になり、自由な意思決定ができなくなる可能性があるので、少なくとも経営陣の持株比率は50%以上を維持できるようにしておきましょう。

資本政策では株価の設定も大切なポイントです。経営陣の持株比率を確保するために株価を高く設定しすぎると、将来、追加での資金調達が必要になった際に出資を受けづらくなる可能性もあります。通常、ベンチャー企業は、「シリーズA」→「シリーズB」というように出資による資金調達をしながら成長していきます。すなわち、株価は将来的な出資受け入れの可能性も考慮に入れて設定する必要があるということを意識しておきましょう。

弁護士のサポートを受けるメリット

1. 潜在的なリスクを予見して回避することが可能

投資契約の内容の確認や資本政策の立案には、会社法、税法、証券取引法などの法律や規制に関する知識が不可欠です。これらの法律や規制を十分に理解している自信がない方は、弁護士に相談しながら進めると良いでしょう。
資金調達関連のサポートの実績を持つ弁護士のサポートを受けることで、企業の成長の妨げとなる潜在的なリスクを予見して回避することが可能になります。また、経営者がビジネス以外に費やす時間や労力を削減することにもつながります。

2. 客観的なアドバイスを受けられる

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家は、投資契約や資本政策についての専門知識を持っているので、これらの投資家に対して質問して疑問点を解消したり、アドバイスを受けたりすることはできるかと思います。ただし、投資家と企業は利益が相反する立場にあるため、投資家のアドバイスを鵜呑みにするのは危険な場合もあります。第三者の立場からの客観的なアドバイスを受けるためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

3.交渉決裂を回避できる

投資契約書を隈なくチェックすると、企業にとって不利に思える条項ばかりと感じることもあるかもしれません。しかし、不利に思える条項の全てについて投資家に変更を要求した場合、投資家との交渉が決裂して出資を受けられなくなる可能性があります。

その会社の魅力や、他に出資を申し出てくれている候補者がいるかにもよりますが、まずは絶対に避けるべき条項に絞って変更要求を行う必要があります。ただし、受け入れるべき条項と変更の必要な条項を見極めることは非常に難しいです。実務経験を積んでいる弁護士のサポートを受けることにより、変更要求をすべき条項を正しく見極めて、最適な形でディールをまとめることができる可能性を高めましょう。

弁護士選びのポイントと注意点

投資契約や資本政策に関するサポートを受ける際は弁護士選びも大切です。資本政策に関する幅広い実務経験を有し、自社のビジネスモデルや利益構造をしっかり理解した上で独自のプランを提案してくれる弁護士のサポートを受けることが望ましいでしょう。法律の専門知識を持つだけではなく、財務理論や会計基準などにも精通し、ベンチャー企業の立場に立った最適なアドバイスができる弁護士を慎重に選びましょう。

スタートアップやベンチャー企業の資金調達や企業法務を専門的に扱い、豊富な実績を持つ法律事務所を選ぶのもオススメです。

まとめ

今回は、資金調達の際に弁護士のサポートが必要な理由、出資を受ける際の潜在的なリスクや最低限知っておくべきポイント、弁護士のサポートを受けるメリット、弁護士選びのポイントと注意点について解説しました。

企業の健全な成長と発展のためにも、早い段階から将来的なリスクを見据えたアドバイスを提供してくれる専門家に相談することが大切です。

我々東京スタートアップ法律事務所は、スタートアップ・ベンチャー企業をはじめとして、これまで多くの企業の資金調達をサポートしてきた実績を元に、各企業のニーズに応じたサポートを提供しています。

資金調達時のサポートを必要とされている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社