企業法務を担当する弁護士の存在意義と業務内容を解説―法務部と顧問弁護士の違いは?
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「企業法務」とは、企業活動に関わる法律的な問題の解決や法的リスクマネジメントなどを全て含めた包括的な概念です。日本では、企業法務があまり重要視されていなかった時代もありましたが、「コンプライアンス」や「法令遵守」という概念が浸透していること、様々な分野において法整備が進んでいること、産業構造の変化により従来の法解釈では対応しきれない事業に取り組んでいく必要性が出てきたこと等が影響し、企業内部に法務部を組織して企業内弁護士を雇用したり、外部の弁護士と顧問契約を締結したりすることにより、企業法務の強化に取り組む企業が増えています。
他方で、企業法務の必要性や重要性について漠然と認識しているものの、「企業法務を担当する企業内弁護士や顧問弁護士の存在意義がよくわからない」、「どのような場面で企業法務が必要となるのか具体的にイメージできない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、企業法務を担当する弁護士の役割と業務内容、予防法務の必要性、企業活動で弁護士が活躍する具体的な場面、社内の法務部門と顧問弁護士の立場や役割の違い、企業法務に関連する弁護士以外の資格などについて解説します。
企業法務を担当する弁護士の3つの役割
企業法務を担当する企業内弁護士や顧問弁護士には、一般的に以下の3つの役割があると言われています。
- 臨床法務
- 予防法務
- 戦略法務
3つの役割について詳しく説明します。
1. 臨床法務
「臨床法務」は、企業が従業員や顧客から訴えられる等の法的トラブルに巻き込まれた際の対応のことです。言い換えれば、臨床法務とはいわゆる「紛争解決」のことを指し、企業に何か法的なトラブルが起きた際にそれを事後的に解決することをいいます。法的な紛争や裁判に対応する場合も多いため、紛争処理法務あるいは裁判法務と呼ばれることもあります。また、トラブルが発生した後の事後的な対応となるため、治療法務という呼び方もされています。弁護士に対する世間一般のイメージとしては、この臨床法務をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
臨床法務というと、裁判で勝訴するための証拠集めなどをイメージされる方も多いかと思いますが、当事者同士の話合いによる穏便な解決を促すことも臨床法務に含まれます。
2. 予防法務
「予防法務」は、法的なトラブルを未然に防ぐためのリスクマネジメントを意味します。臨床法務のように、トラブルが発生した後の事後対応を行うのではなく、起こり得るトラブルを事前に予測し、未然に防ぐための予防策を講じます。企業が抱える潜在的なリスクを洗い出し、リスクを未然に回避する予防法務は、健全な企業活動を続けるためのリスクマネジメントとして不可欠です。
例えば、労使トラブルを回避するために職場環境や多様化する社員の働き方に合わせた就業規則や雇用契約書を用意する、社員の不祥事や不正を防止するためにコンプライアンス研修を実施する、訴訟等のトラブルに備えた契約書の雛形を用意する等のことは、予防法務の基本といえます。
東京スタートアップ法律事務所は、予防法務を単なるリスクマネジメントであると捉えず、企業の「こういう組織にしたい」、「こういうビジネスをしたい」という意思や願いを、我々の持っている法的知識とつなぎ合わせて形にしていく作業だと理解しています。
3. 戦略法務
「戦略法務」とは、法律的には「グレー」であったり、「シロ(=合法)」であることの確証がなかったりしても、法規制が時代とともに変化し得ることを前提に、法律の知識だけでなくビジョンとロジックを駆使して法解釈を行い、自社のビジネスの発展や収益化に貢献する法務戦略を立案・実行することです。例えば、新規事業への参入時に法的リスクを分析し法令への適合性を担保するスキーム構築をする、自社ビジネスを有利に展開するための法改正まで見据えた関係省庁との関係性の構築(ロビイング)をすることなどが、戦略法務の類型に属します。戦略法務には、企業法務に携わる法務パーソンとして備えておくべき法律の知識だけではなく、業界に関する知識、優れたビジネスセンス、事業のビジョンへの共感力、ビジネスモデルへの理解力等が求められます。
日本では、戦略法務の重要性を認識している企業はまだ少数ですが、戦略法務の先進国として知られる米国では、法務部門が積極的に経営に関与して事業の発展に貢献しているケースも多いようです。
産業構造の変化により、時代遅れの法律がたくさん生まれている昨今、自らルールを作っていくことに主眼を置いている「戦略法務」は、今後も重要性を増していくでしょう。
予防法務の重要性
日本では、長い間「法務=臨床法務」と考えられていましたが、例えば、従業員・役員による不祥事や、顧客情報の流出などの問題が発生した場合、「時間を巻き戻して、問題が発生する前の状態に戻したい」と思っても、元の状態に戻すことは不可能です。不祥事等の問題による実被害をなかったことにすることはできませんし、失った社会的な信頼を取り戻すためにも相当な時間と労力が必要になります。
インターネットやネットにアクセス可能な端末の普及もあり、会社の不祥事や問題は、一瞬で拡散され、多くの人の目に留まるようになりました。
企業による個人情報漏洩が発覚した場合、企業の信頼が大きく失われることにより顧客離れが起き、今まで順調に発展してきた企業が一気に経営不振に陥る可能性もあるのです。
このような事情から、最近では、予防法務の重要性が注目されています。
企業法務を担当する弁護士の業務内容
企業法務を担当する弁護士はどのような業務を担当するのでしょうか。企業法務を担当する企業内弁護士や顧問弁護士の業務内容について説明します。
1. 業務内容は多岐にわたる
企業法務を担当する弁護士の業務は非常に多岐にわたります。主な業務内容は以下の通りです。
- 従業員との間で締結する雇用契約書や秘密保持契約書の作成
- 取引先との間で締結する売買契約や業務委託契約等の作成やリーガルチェック
- 売掛金等の債権回収のサポート
- 社内規則、サービスの利用規約、プライバシーポリシー、ガイドライン等の作成
- 労使間紛争や訴訟等の法的トラブルが発生した際の対応
- 株主総会、取締役会、監査役会の準備や運営支援
- 知的財産権の管理
- 内部通報制度の構築
- 新規事業の法令適合性のリサーチや法的意見の作成
- 新規事業の法的リスクマネジメント・法令適合性のリサーチ
- 従業員に対する法務・コンプライアンスに関する教育や啓蒙活動
以上はほんの一例であり、各企業の業種、規模、方針などによって、企業法務における業務内容や優先順位は大きく異なります。
2. 国際法務のニーズも増えている
海外企業とのM&Aや海外進出する企業の増加に伴い、国際法務のニーズも増えています。
企業が海外進出する場合、進出先の国の法律や国際社会を規律する国際法について理解する必要があります。現地で従業員を雇用する場合は、現地の労働法や関連法規をしっかり確認しなければなりません。例えば、中国では従業員を雇用する際に書面で労働契約を結ぶ必要があり、労働契約書に記載する事項は労働法で定められています(中華人民共和国労働法第19条)。また、北京市では労働契約書に労働者の性別や年齢を記載しなければならない(北京市労働契約規定第12条)など、各地方によって独自の規定が定められています。このように、外国には日本には存在しない規定が存在する場合もあるため、事前にしっかり確認する必要があります。
企業法務を担当する弁護士に必要な知識とスキル
企業法務を担当する弁護士に求められる専門的な知識やスキルについて説明します。
1. 幅広い法律の専門知識が必要
企業法務の業務内容は多岐にわたるため、企業法務を担当する弁護士には、幅広い法律の専門知識が求められます。例えば、企業活動の中で日々締結される契約書のリーガルチェックでは、企業間の利害関係の調整に関わる民法の債権関係についての専門知識が不可欠なのはもちろん、法律を超えて業界の慣習等についてもアンテナを張る必要があります。昨今は、労使トラブルが増加傾向にあるので、労働基準法や働き方改革関連法などの労働関連法規の知識や判例を熟知しておくことも大切です。また、インターネットの普及に伴い、個人情報保護法やサイバーセキュリティ基本法などの情報セキュリティ関連の法律の知識が求められる場面も増えています。
さらに、金融商品取引法など業界ごとに特有の法規制も存在しますので、業界や企業の業務内容に関連する法規制の知識も求められます。新しい法規制の制定や既存の法規制の改正も頻繁に行われていますので、知識のアップデートも欠かせません。
2. 業界知識やビジネススキルも必要
企業法務に携わる法務パーソンには、法律の知識を有していることや法律を正しく解釈できるだけではなく、経営上の戦略的思考を身につけることが求められます。すなわち、その業界特有の事情やビジネスモデルを認識・理解し、その知識を常にアップデートしていく姿勢が求められるのです。
ある事業についての見解を求められた際に、法律の専門家として「このような規制に抵触するおそれがある」といった意見は当然求められますが、それだけでは単に「法律を知っているだけの人」に過ぎません。
慎重になりすぎるとビジネスチャンスを逃す可能性もあります。法令を遵守していく姿勢は立派ですが、ビジネスをスケールさせるため、時として積極的にリスクテイクしていく姿勢は非常に重要です。「法令遵守」という姿勢だけでは、「Google」や「Uber」のような革新的なビジネスは生まれないのではないでしょうか。
3. 論理的思考と柔軟な発想力も必要
一流の法務パーソンとしては、「このように工夫すれば規制に抵触せずに実現できる可能性がある」など、ビジネス上のニーズを汲み取り、論理的かつクリエイティブな思考を積み重ね、法律を合理的に解釈し、柔軟なアイデアを提案する発想力も必要です。「論理的思考力」(左脳的思考)と「クリエイティブ」(右脳的思考)を車の両輪として自在に使えるようになる必要があるのです。
経済産業省が公表している「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」には、企業の法務部門に必要な機能として以下の2つが記載されています。
- ガーディアン機能(守りの機能)
法的リスクマネジメントの観点から、会社の資産や評判を守る機能 - パートナー機能(攻めの機能)
会社の経営や新規事業等が円滑に実施できるように法的な側面からサポートする機能
つまり、これからの法務パーソンには、法的なリスクとビジネスの発展のバランスを考慮しながら、攻めと守りの両方の役割を果たすバランス感覚が求められることになります。
さらに、グローバル化が進んだ企業では、国際法などを英文で読む読解力や英文の契約書を作成できるレベルの語学力が求められる場合もあります。
企業活動で弁護士が活躍する具体的な場面
顧問弁護士がどのような場面で必要となるのか具体的に知りたいという方もいらっしゃるかと思いますので、典型的な例を7つご紹介します。
1. 労使トラブルの円満解決
近年、職場内のパワハラ、セクハラ、マタハラなどのハラスメント行為によるメンタルヘルスの不調、リストラ、不当解雇、残業代の未払い等の問題で、企業が従業員や元従業員から訴えられるケースが増えています。2016年に日本弁護士連合会が実施した「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」では、法律に絡む困りごとの第1位は「雇用問題」(37.1%)でした。
(出典:日本弁護士連合会「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」)
最近は、個別労働紛争の迅速な解決を目的とした労働審判制度が利用されるケースも増えていますが、企業が従業員や元従業員から労働審判の申立てを受けた場合、限られた期間内に必要な証拠を集めて答弁書を作成しなければなりません。答弁書の内容に不備があると、会社側は慰謝料等の請求に応じなければならない可能性が高まりますが、労働法や関連法規の専門知識を持つ企業法務の担当者なら、法的根拠に基づき、適切な答弁書を作成して対抗することが可能です。
2. 問題社員への適切な対応
モンスター社員などとも呼ばれる問題のある社員の円満退職を促す際も、法務パーソンの力が必要となります。問題のある社員を放置すると他の社員へ悪影響を及ぼすことも多いため、企業としては一刻も早く退職してほしいと考えるかもしれませんが、円満退職のためには、問題行動の改善を要求して話し合いの機会を設けるなどの適切なステップを踏まなければいけません。
問題行動を指摘して改善を要求し、その後も改善がみられない場合は、退職について冷静に話し合うことになります。その際、人事部の担当者や上司が問題社員と直接話し合いをすると、感情的な対立が生じてトラブルに発展する可能性もあります。法律の専門家であり第三者的な立場である法務担当者のサポートを受けることにより、冷静な話し合いができるだけではなく、法的なリスクを回避しながら問題社員の円満退職を促すことにつながります。
問題社員が退職を強要されたと感じた場合、「不当解雇だ!」などと企業を訴えて多額の賠償金を請求するケースも想定されるため、労働基準法等の労働関連法規を熟知した専門家が法的なリスクマネジメントを行いながら慎重に進める必要があるのです。
3. 迅速かつ適切な法的手段による売掛金回収
売掛金などの債権の確実な回収は、健全な企業活動を営む上で非常に重要です。前述の「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」においても、法律に絡む困りごととして「雇用問題」(37.1%)の次に多かった回答は「債権回収」(30.3%)でした。
売掛金の入金が遅延し、催促しても入金されない場合、取引先の財務状況が悪化している可能性があるため迅速な対応が必要です。取引先との関係をできるかぎり悪化させずに売掛金を確実に回収するためには、法務担当者が迅速かつ適切に状況に合う法的手段を講じることが大切です。
4. 契約書のリーガルチェック
取引先と契約を締結する際に、契約書の内容について法的な問題や自社に不利な内容がないかチェックすることも企業法務に携わる者の重要な役割です。法律のプロの視点によるリーガルチェックが可能となるため、問題がある内容や自社にとって不利な項目が見つかった場合、取引先に対して法的根拠に基づく契約書の修正依頼を行うことが可能になります。
5. クレーム対応
近年増加傾向にあるカスタマーハラスメントの被害から従業員を守ることも企業の法務部門に求められる大切な役割の一つです。カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先から受ける悪質な嫌がらせや脅迫まがいの暴言等の迷惑行為のことをいいます。カスタマーハラスメントの中には、恐喝罪、強要罪、業務妨害罪等の刑事罰の対象となるケースもあり、従業員を守るためにも、業の法務担当に相談して法的根拠に基づく適切な対応を行うことが求められます。
顧客からの悪質な嫌がらせに対して従業員が一人で対応した場合、精神的なダメージを受けて、精神疾患を発症するなど深刻なトラブルに発展する可能性もあります。そのため、担当者を孤立させないよう顧問弁護士のアドバイスを受けながら組織的に対応できる体制を構築することが大切です。
6. 新制度導入時の法的リスクマネジメント
昨今、社会環境の変化や法改正に伴い、新しい制度の導入を検討する必要が生じる場面も増加しています。例えば、2020年から世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルス感染拡大を受けて、企業は従業員を感染リスクから守るためにテレワークや在宅勤務の導入を検討する必要に迫られました。しかし、テレワークや在宅勤務には、労働時間の把握等の労務管理が困難になる等の法的リスクがあり、適切な勤怠管理や残業申請等の社内規定を整える必要があります。法務部門が制度設計に関与することにより、想定される法的リスクを回避し、適切な制度設計を行うことが可能になります。
7. 新規事業開始時の法的リスクマネジメント
企業のさらなる成長のために、時代のニーズに応じた新しい事業を開始する場面もあるかと思います。新規事業を開始する際には、事前にその事業が法規制に抵触する可能性について入念に確認する必要があります。新しく始める事業の内容によっては、幅広い分野の法規制を確認しなければならないケースもありますが、法務部門に一任できれば安心です。
社内の法務部門と顧問弁護士の違い
最近は、大手企業だけではなく、中小企業の中でも社内に法務部門を設置する企業が増えています。企業内弁護士を雇用する企業も増えていて、日本組織内弁護士協会(JILA)が公開している「企業内弁護士数の推移(2001年~2021年)」という資料によると、2001年の調査開始時点では全国でたった66名だった企業内弁護士が、2021年には2,820名まで増加したそうです。他方、外部の顧問弁護士と契約して、法務に関する全般的なアドバイスを受けている企業も多いです。社内の法務部門と外部の顧問弁護士にはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれのメリットとデメリットについて説明します。
(出典:日本組織内弁護士協会「企業内弁護士数の推移(2001年~2021年)」)
1. 社内の法務部門のメリットとデメリット
社内に法務部門を設置するメリットとして、自社の状況やビジネスの内容、業界内での立ち位置などを十分に理解した上での対応を期待できることがあります。自社の従業員なので、新規事業やサービスの立ち上げ時なども、企画段階のミーティングから参加してもらえます。自社の事業・サービスの内容や方針について深く理解した上で、自社のビジネスの展開に必要な法的なリスクの回避策を考案してもらえる可能性も高いです。
ただし、企業法務においては、法律の専門知識や自社のビジネスに対する理解だけではなく、経験値に基づきリスクを予見する能力などの高度なスキルが必要な分野です。法務部門の人材の実務経験や専門家としてのスキルが不足している場合は、期待した成果が得られない場合があるという点は認識しておきましょう。
2. 顧問弁護士のメリットとデメリット
社外の顧問弁護士と契約を結ぶメリットは、企業法務のスペシャリストとして豊富な実務経験を積んだ弁護士からアドバイスやサービスの提供を受けられることです。顧問弁護士の多くは複数の企業と契約を結び、日々、契約書のリーガルチェック、債権回収のサポート、労使トラブル解決の支援等の法的業務を行っています。様々な業種の企業法務の実務経験を積んでいるため、企業が抱えている潜在的なリスクを鋭く予見する力も備えている弁護士が多いです。また、企業法務に携わる弁護士の中でも優れた人間は、最新の法規制の改正や判例といった法律周りに関する知識のアップデートを怠らないだけでなく、各業界の事業を取り巻く環境やビジネスモデルについても学び、考え、常に自己研鑽を積んでいます。
法務部門を持つ企業でも、外部の弁護士と顧問契約を結び、定期的に自社が抱える法的課題について話し合う機会を設けている企業も存在します。特に、新規事業やサービスの展開など社運を賭けた重要な課題の場合、多角的な検討が必要となるため、セカンドオピニオンとして社外の弁護士からもアドバイスを受けることが望ましいでしょう。
企業法務に関連する弁護士以外の主な資格
企業法務に関する業務の全てに弁護士が関与すると膨大なコストがかかることから、社内の法務部門には弁護士以外の企業法務関連の有資格者が在籍し、必要に応じて顧問弁護士に相談するという体制をとる会社も増えています。企業の法務部門ではどのような資格を持つ人材が活躍しているのでしょうか。主な資格について説明します。
1. 司法書士
司法書士は、主に不動産登記や商業登記等の登記、裁判所への提出書類作成などの法律業務を扱う国家資格です。弁護士の人口不足を補うため、2002年からは、法務省の認定を受けると認定司法書士として簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟を扱うことが認められるようになりました。
簡易裁判所における訴訟にも対応可能なことから、法務部門の人材として認定司法書士の資格所持者を積極的に採用する企業も増えているようです。
2. 行政書士
行政書士は行政書士法に基づく国家資格で、主に官公庁への提出書類、権利義務・事実証明に関する書類作成などを専門的に行います。企業活動の中で締結される契約書の作成も専門としているため、企業の法務部門で活躍する場面は多いでしょう。
3. 弁理士
弁理士は弁理士法で定められた知的財産権に関する業務を行うための国家資格です。特許権、商標権、実用新案権などの知的財産権の申請手続を代理で行うことが主な仕事です。
また、模倣や権利侵害等の疑いがあり他社から訴えられた場合の対応も行うことが可能です。製造業や研究開発部門を持つ企業の中には、法務部門とは別に知的財産部門を設置している企業もあり、そのような企業の知的財産部門には弁理士の資格所持者が在籍しているケースが多いです。
4. 社会保険労務士
社会保険労務士は社会保険労務士法に基づく国家資格で、主に労働関連法令や社会保障法令に基づく書類等の作成代行、企業の労務管理や社会保険に関する相談・指導を行う専門家です。従業員と企業との間で起きる労使間トラブルの未然に防止策、実際にトラブルが発生した際の対処法について専門家の立場からアドバイスを提供することも可能です。社会保険労務士は企業の人事部や総務部に所属して、就業規則・賃金規程の作成や見直しなどを担当することが多いようですが、最近は労使間トラブルが増加傾向にあることから、法務部門で必要とされることも増えているようです。
5. ビジネス実務法務検定
ビジネス実務法務検定試験は、東京商工会議所が運営している民間の検定試験です。企業経営に必要不可欠な法令遵守のための実践的な法律知識を体系的かつ効率的に習得することを目的としています。法律関連の民間資格の中でも知名度の高い資格で、実際のビジネスシーンに即した実務的な法律知識を習得できる点が高く評価されています。
ビジネス実務法務検定試験は3級から1級まであり、1級取得者は、ビジネス全般に渡り必要とされる法律実務知識を持ち、その知識に基づいて多面的な観点から高度な判断・対応ができるとされています。
6. ビジネス・キャリア検定
ビジネス・キャリア検定は職業能力開発促進法に基づき設立された中央職業能力開発協会が運営する公的資格試験です。厚生労働省が作成した職業能力評価基準に準拠した試験なので、実践的な職業能力を客観的に証明することが可能です。
ビジネス・キャリア検定試験は、企業実務の8分野に分かれていて、そのうちの一つの分野として「企業法務・総務」があります。企業実務の試験範囲には、会社の設立・運営、契約、債権管理、知的財産管理、紛争処理に至る企業活動全般に関する法律業務が含まれます。ビジネス・キャリア検定試験の「企業法務・総務」分野の資格を取得して法務部で活躍されている方もいらっしゃるようです。
まとめ
今回は、企業法務を担当する弁護士の役割と業務内容、予防法務の必要性、企業活動で弁護士が活躍する具体的な場面、社内の法務部門と顧問弁護士の違いについて解説しました。
企業を取り巻くビジネス環境が変化し、法規制も進む中、事業に内在する法務リスクも刻々と変化しています。時代の変化に対応しながら健全な企業活動を続けるためには、企業法務への取り組みは不可欠です。
我々東京スタートアップ法律事務所は、企業法務のプロとして、契約書や社内規則の整備やリーガルチェック、社内のコンプライアンス教育のサポート、新規事業やサービス立ち上げ時や海外進出時の法的リスクマネジメント、ベンチャー企業の資金調達やM&Aの際の法的サポート等、各企業のニーズや予算に合わせた様々なサポートを提供しています。
また、東京スタートアップ法律事務所の弁護士は、法律だけでなく、日々最新のビジネスモデルについて学び、考え、柔軟な思考をもってサービスを提供できるように研鑽を重ねています。
企業法務、ひいては事業に関するお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。