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投稿日: 弁護士 吉田 有美香

秘密保持契約(NDA)とは 基礎知識や締結時のポイント、違反時の対処法を解説

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秘密保持契約(NDA)とは

秘密保持契約とは、ビジネスを行う上で、自社が持つ情報を他社に開示しなければならないときに、その開示した情報を他社が本来の目的以外で使用することや、第三者に開示することを、法的な拘束力を持って制限するために交わすものです。

秘密保持契約は、英語で「Non-Disclosure Agreement」といい、その頭文字をとって「NDA」と呼ぶこともあります。

また、「機密保持契約」と呼ばれることもありますが、呼び方が違うだけで、内容や効力に違いはありません。

例えば、他社と新しい製品やシステムを共同開発するとき、自社の新商品や新技術の情報を開示しなければ仕事が進まない場合があります。

そのようなときに秘密保持契約を結ぶのです。

1. 秘密保持契約(NDA)の必要性

秘密保持契約を結ぶメリットは、主に以下のとおりです。

①秘密情報の漏洩や不正使用の防止

秘密保持契約では、秘密情報の無断開示や目的外使用を禁じるだけでなく、秘密情報の管理方法や、取引等が終了した時の秘密情報の返還方法についても定めることで、実効的に秘密情報の漏洩や不正使用を防ぐことができます。

②将来特許を取得する可能性への備え

秘密保持契約を結ばずに秘密情報を開示してしまった場合、その情報は「特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明」(特許法第29条第1項第1号)に該当するとされて、特許を受けることができなくなるため、秘密保持契約を結ぶ必要があります。

③情報の漏洩等があった場合に損害賠償請求できる

秘密保持契約を締結していれば、相手方の過失によって情報の漏洩等があった場合に、契約違反に基づく損害賠償を請求することができます。

 

2. 秘密保持契約(NDA)を締結するタイミングはいつ?

秘密保持契約は、秘密情報のやりとりが発生する前の段階で締結する必要があります。
具体的には、次のような場面が想定されます。

  1. 商談や打合せを行うとき
  2. 取引を開始するとき
  3. 資本提携・業務提携を検討するとき
  4. 合併等の事業承継を検討するとき
  5. 共同研究や共同開発で技術情報を開示するとき

秘密保持契約を締結せずに秘密情報を開示して、最終的に取引に至らなかった場合、情報の受領者側にその秘密情報を利用されてしまうリスクが生じます。

秘密情報の開示は、秘密保持契約を締結してから行うようにしてください。

なお、秘密保持契約を締結する前に秘密情報を開示してしまったという場合でも、すみやかに秘密保持契約を締結するべきです。

このような場合には、契約締結前に開示された情報も秘密情報として取り扱うようにするなどの定めを記載することで、リスクを軽減させることができます。

 

秘密保持契約(NDA)に関連する「不正競争防止法」について

秘密保持契約に関連する法律として、「不正競争防止法」があります。

この法律は、事業者間の公正な競争を確保するため、不正な競争を防止するためのルールを定めています。

不正競争防止法において、禁止行為の類型の一つとされているのが、営業秘密の侵害です。

営業秘密の不正取得、不正使用、不正開示が行われた場合には、損害賠償請求、差止請求、信用回復措置請求などを求めることができます。

また、刑事上の罰則を受ける場合もあります。

つまり、秘密保持契約を締結しなくても、「営業秘密」に該当する情報については、一応の法的な保護を受けることはできます。

秘密保持契約を結ぶと、保護対象となる秘密情報の範囲を、不正競争防止法上の「営業秘密」の範囲より広げることが可能です。
より広い範囲の情報を保護したい場合は、秘密保持契約を締結する必要があります。

不正競争防止法の要件

不正競争防止法で「営業秘密」に該当する要件は以下のとおりです。

① 秘密として管理されていること(秘密管理性)
従業員等からみて、その情報が会社にとって秘密にしたい情報であることがわかる程度に、アクセス制限等の秘密管理措置がなされていることを言います。

② 有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
技術上のノウハウや顧客リストなどが該当します。現実に利用されていない情報も含まれます。

③ 公然と知られていないこと(非公知性)
保有者の管理下以外では一般に入手できないことをいいます。

「営業秘密」として保護されるには、上記の3要件を全て満たすことが必要で、相当限定された情報となります。

例えば、社内では厳重管理扱いしていなくても、社外に対しては秘密情報として扱ってほしいという場合は、秘密保持契約を締結する必要があります。

秘密保持契約(NDA)の主な契約事項

秘密保持契約において規定すべき主な条項は以下の通りです。

  1. 契約の当事者と目的
  2. 秘密情報の定義・除外事由
  3. 秘密保持義務・目的外使用の禁止
  4. 秘密情報の返還・破棄
  5. 損害賠償
  6. 有効期限・存続条項

秘密保持契約の内容は、自分が情報の開示側なのか、受領側なのかによって、定めるべき内容が大きく異なってきます。

以下、記載例とともに、各条項について説明いたします。

ただし、記載例はあくまでも一例ですので、契約書を作成する際には、実際の取引内容に合った記載にすることが重要です。

①契約の当事者と目的

契約書の冒頭で、契約の当事者と、契約を締結する目的を明記します。

秘密保持契約は、当事者間で定めた目的に従って秘密情報を利用し又は利用を制限することに真の目的があります。

契約目的は、「目的外使用」に該当するかを判断する基準となりますので、わかりやすく記載する必要があります。

記載例

株式会社●●(以下「甲」という。)と 株式会社▲▲(以下「乙」という。) とは、○○○○ について検討するにあたり(以下「本取引」という。)、甲又は乙が相手方 に開示する秘密情報の取扱いについて、以下のとおりの秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。

 

②秘密情報の定義・除外事由

開示者が開示する情報のうち、どこまでの情報を秘密情報として扱う必要があるのかを明確にするための条項です。
開示側としては、秘密情報の範囲を広くするよう定め、受領側としては、秘密情報の範囲を明確にするよう定めるべきです。

記載例(開示側)

(秘密情報)
本契約における「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に開示し、かつ開示の際に秘密である旨を明示した技術上又は営業上の情報、本契約の存在及び内容その他一切の情報をいう。

 

記載例(受領側)

(秘密情報)
本契約における「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に開示し、かつ開示の際に秘密である旨を明示した技術上又は営業上の情報、本契約の存在及び内容その他一切の情報をいう。ただし、開示を受けた当事者が書面によってその根拠を立証できる場合に限り、以下の情報は秘密情報の対象外とするものとする。
① 開示を受けたときに既に保有していた情報
② 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
③ 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した情報
④ 開示を受けたときに既に公知であった情報
⑤ 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報

 

また、開示側であれば、開示の際に秘密であることを伝えずに開示してしまった場合に備えた規定を入れることも考えられます。

記載例

甲又は乙が、秘密情報である旨指定せず情報を開示した場合においても、当該情報を開示した当事者が開示の日から30暦日以内に当該情報が秘密情報である旨を書面により相手方に通知することで、当該情報は通知到達日より秘密情報として取り扱われることとする。

 

③秘密保持義務・目的外使用の禁止

秘密保持義務条項は、秘密情報について管理の義務を明記し、管理方法や、誰にまで開示してよいかを定める重要な条文です。

また、目的外使用の禁止条項は、秘密情報をどの範囲まで利用して良いかを明確にする条項です。

不正競争防止法の「営業秘密」に該当しない情報は、原則として受領側が自由に利用することができてしまいますので、目的外使用の禁止条項も重要な条文です。

開示側ならば、秘密情報の開示の範囲や利用範囲は狭くするよう定めるべきです。

一方、受領側は、秘密情報の開示の範囲や利用範囲を広くするよう定めるべきです。

記載例(開示側)

(秘密情報の取扱い)
1. 甲及び乙は、相手方から開示された全ての秘密情報を善良な管理者の注意をもって秘密として保持するものとする。

2. 甲及び乙は、相手方から開示された秘密情報を本取引以外の目的に使用してはならならず、本取引を遂行するために知る必要のある最小限の自己の役員、及び従業員において使用することとする。 但し、書面により事前の相手方の同意を得た場合はこの限りではない。

3. 甲及び乙は、相手方に事前の書面による同意を得ずに、相手方から開示された秘密情報を自己以外の第三者に開示してはならない。相手方に事前の書面による同意を得て第三者に秘密情報を開示する場合は、本契約に基づき自己が負うのと同等の義務を当該第三者に負わせる義務を負い、かつ当該第三者の義務履行につき一切の責任を負うものとする。

4. 本条第1項の規定にかかわらず、裁判所、行政機関又は法令により相手方から開示を受けた秘密情報の開示を要請された場合、当該開示を要請された当事者は当該裁判所又は行政機関に対しこれを開示できるものとする。但しその場合、当該開示を要請された当事者は、当該秘密情報の性質に鑑み 、当該開示先に対し可能な限りの秘密保持の措置を講ずると共に、相手方に当該開示先と開示内容について書面で通知するものとする。

5. 甲及び乙は、相手方の書面による事前の同意があった場合を除いて、開示を受けた秘密情報の全部又は一部の改変、要約、部分利用を行ってはならない。また、甲及び乙は、相手方の書面による事前の同意なく、開示を受けた秘密情報の複写又は複製を行ってはならない。

6. 甲及び乙は、前項の同意により作成した改変、要約、部分利用、複写又は複製による二次資料についてもこれを秘密情報として取り扱うものとする。

 

記載例(受領側)

(秘密情報の取り扱い)
1. 甲及び乙は、相手方から開示・提供された全ての秘密情報を善良な管理者の注意をもって秘密に保持するものとする。但し、書面により相手方の同意を得た場合はこの限りではない。

2. 甲及び乙は、相手方から開示された秘密情報を本取引以外の目的に使用してはならない。但し、書面により相手方の同意を得た場合はこの限りではない。

3. 甲及び乙は、相手方の事前の書面による同意を得ずに、相手方から開示された秘密情報を自己以外の第三者に開示してはならない。相手方の書面による同意を得て第三者に秘密情報を開示する場合は、本契約に基づき自己が負うのと同等の義務を当該第三者に負わせ、かつ当該第三者の義務履行につき一切の責任を負うものとする。

4. 本条第1項の規定にかかわらず、裁判所、行政機関又は法令により相手方から開示を受けた秘密情報の開示を要請された場合、当該開示を要請された当事者は当該裁判所又は行政機関に対しこれを開示できるものとする。

5. 甲及び乙は、相手方の書面による事前の同意があった場合を除いて、本検討に必要な範囲を超えて開示を受けた秘密情報の全部又は一部の改変、要約、部分利用、複写又は複製を行ってはならない。

6. 甲及び乙は、前項の同意により作成した改変、要約、部分利用、複写又は複製による二次資料についてもこれを秘密情報として取り扱うものとする。

 

④秘密情報の返還・破棄

秘密保持契約の終了や、開示側が要求した場合などに、受領側が秘密情報の返還や破棄を行うことを定める条文です。

開示側としては、目的達成のために必要がなくなれば秘密情報を返還・破棄するという条項を入れるべきです。

また、実務上は実際に破棄をしたかの確認をとることが難しいため、受領側から消去した旨の書面を受け取ることが考えられます。

受領側としては、返還・破棄という作業の手間を減らすため、当該条項を入れないか、最低限の範囲とすることが望ましいです。

記載例(開示側)

(返還・廃棄)
1.        甲及び乙は、相手方から開示された秘密情報を含む有体物、電子データ及びこれらの複写、複製物の全てを、本契約が終了するにあたり又は相手方から要求があったときは、直ちに当該相手方の指示に従い返還、引き渡し又は廃棄しなければならない。

2.        前項の定めに関わらず、甲及び乙は、本契約が終了した場合又は相手方から要求があった場合、電子データ形式で相手方から開示された秘密情報であって、電子計算機上に保存されている秘密情報は、再生不能な形で削除する。

3.        甲及び乙は、前二項にあたり、秘密情報を含む有体物、電子データ及びこれらの複写、複製物を廃棄した場合は、遅滞なく廃棄日、廃棄した内容及び廃棄方法等を書面にて当該相手方に通知する。

 

記載例(受領側)

(返還・廃棄)
甲及び乙は、相手方から開示された秘密保持が表示された有体物及び電子データ及びこれらの複写、複製物の全てを、本契約が終了した場合、直ちに当該相手方の指示に従い返還、引き渡し又は廃棄しなければならない。

 

⑤損害賠償・差止め

秘密保持契約に違反した場合のペナルティを定める条項です。

開示側としては、発生した損害について出来る限り広く賠償を求める規定にすべきです。

また、受領側が秘密情報の漏洩のおそれがある行為をしようとしているときに差止めを求めることができる条項を入れるべきです。

一方、受領側であれば、賠償の対象となる損害の範囲を限定する定めにする必要があります。

また、差止めの条項は入れないことが望ましいです。

記載例(開示側)

(損害賠償)
甲及び乙は、相手方の秘密情報等を開示するなど本契約の条項に違反した場合には、相手方が必要と認める措置を直ちに講ずるとともに、相手方に生じた損害(通常損害、特別損害、逸失利益、弁護士費用その他の訴訟関連費用を含む。)の賠償をしなければならない。

 

(差止め及び漏洩時の措置)
甲及び乙は、相手方が本契約に違反して秘密情報の漏洩等をし、又はする恐れが生じた場合、相手方に対し、当該義務違反行為の差止め、被害の拡大防止及び被害回復のために必要と判断する措置を講じるようを請求することができる。

 

記載例(受領側)

(損害賠償)
甲及び乙は、相手方が本契約に違反したことにより損害を被った場合には、相手方に対し、直接かつ現実の損害の賠償を請求することができる。

 

⑥有効期限・存続条項

秘密保持契約上の義務をいつまで負うのかを明確にするための条項です。

開示側としては、秘密情報を保護するため、契約が終了してからも一部の条項については有効期間を延長するような定めを入れるべきです。

受領側としては、契約が終了した時点で秘密保持義務を負わなくて済むような定めとするべきです。

記載例(開示側)

(有効期間)
1. 本契約の有効期間は、本契約締結日から1年間とする。ただし、有効期間満了日の2か月前までに、甲又は乙から相手方に対する書面の通知がない場合は、本契約は同一条件で1年間継続するものとし、以後も同様とする。

2. 前項に基づき本契約が終了した場合でも、第●条(秘密情報の取扱い) 、第●条(不当介入への対応損害賠償)、第●条(差止め及び漏洩時の措置)、第●条(損害賠償)、本条(存続条項)、及び第●条(裁判管轄)は対象事項が存在する限り、本契約終了後5年間その効力は存続する

 

記載例(受領側)

(有効期間)
本契約の有効期間は、本契約締結日から1年間とする。ただし、甲乙間の合意により、延長することができる。

秘密保持契約(NDA)の締結手順

次に、秘密保持契約の締結手順についてみていきます。

秘密保持契約は、以下の流れで締結します。

①契約書の原案の決定

秘密保持契約は、商談や取引の開始前に、迅速に締結する必要があることから、秘密保持契約書の雛形を保持している会社も多いです。

まずは、どちらの会社の雛形を原案として使用するかを決定しましょう。

実際には、当事者間のパワーバランスによって決定することが多いですが、契約書の雛形はそれを保持する会社に有利なように作られていることが多いですので、できるだけ自社の雛形を原案として使用できるよう交渉してみましょう。

②契約書の内容・条件の調整

契約書の原案が決定したら、その原案が、当該取引の実態に照らして適切な内容であるかを確認する必要があります。

相手方の秘密保持契約書の雛形を使用する場合には、次項の「秘密保持契約(NDA)締結する際のポイント」を参考に、自社にとって不利益がないかしっかりと確認してください。

特に、自社にとって入れるべき条項がそもそも原案に入っていない、という場合は見落としがちになってしまいますので注意してください。

契約書の内容に問題がないか、弁護士のリーガルチェックを求めることも有用です。

③秘密保持契約書への押印

当事者間で秘密保持契約の内容の合意ができたら、すみやかに押印手続に移りましょう。

秘密保持契約書の効力は、「契約の締結日から」と定められている場合がほとんどです。

スムーズに当事者間で商談や取引等を開始するためにも、内容の合意ができたら、すみやかに押印し、契約を締結しましょう。

秘密保持契約(NDA)を締結する際のポイント

秘密保持契約を締結する際に、特に確認すべきポイントは以下の通りです。

1. 自社が秘密情報の開示側か、受領側か、又はその両方に該当するのかを整理する

これまでも述べてきたとおり、秘密保持契約に定めるべき内容は、自社が秘密情報の開示側か受領側かによって、大きく変わってきます。

秘密保持契約を締結する際の大前提として、自社の立場を整理することが重要です。

 

2. 秘密保持契約を締結する目的は明確かを確認する

秘密保持契約は、開示した秘密情報をその目的のために使用させ、また、目的外の利用を制限するために締結します。

そのため、秘密保持契約書に記載されている締結目的が、明確かつ実態に即したものであることが非常に重要です。

法務担当者だけでなく、実際の取引にあたる担当者とともに、しっかりと確認しましょう。

 

3. 秘密情報の定義やその範囲は明確かを確認する

自社が開示側である場合、守りたい情報が秘密情報の定義に該当しなければ意味がありません。

また、受領側の場合、秘密情報の範囲が不明確であると、ありとあらゆる情報の取扱いについて義務を負うことになってしまいます。

そのため、秘密情報の定義は明確なのか、例外を定める場合その範囲は適切なのかについて、確認する必要があります。

 

4. 秘密保持契約の内容が、実態に即しているかを確認する

せっかく秘密保持契約を締結しても、その内容がその取引の実態に即していなければ意味がありません。

例えば、共同開発の場面で、その一部を第三者に請け負わせることを想定している場合は、どのような場合に第三者に開示できるかを明確にし、その第三者が秘密情報を漏洩した場合にも責任追及ができるようにしておく必要があります。

 

5. 契約書の有効期間が適切かを確認する

秘密保持契約書では、秘密保持義務などの一部の条項について、契約終了後にもその効果を存続させる規定を入れる場合がほとんどです。

もっとも、有効期間を無期とすると、秘密情報の受領側は永久にその義務を負うことになり、過度な負担を強いられることになります。

通常は、契約終了後3年や5年などと限定します。この期間は、開示される情報や技術の陳腐化される期間に合わせて設定しましょう。

秘密情報を漏洩・不正利用された際の対処法

秘密保持契約に違反して、秘密情報の漏洩や不正利用があった場合、開示側が受領側に対して損害賠償を請求することができます。

もっとも、損害賠償の請求にあたっては、漏洩や不正利用の事実そのものの立証や、損害額の立証などが必要であり、これが難しい場合も多いです。

秘密保持契約を締結すれば損害が発生しても必ず回復される、というわけではありませんので注意が必要です。

それでも、秘密保持契約を締結することで受領側に秘密情報の管理についての意識づけをすることができますので、漏洩等のリスクを縮減する意味で、やはり秘密保持契約を締結する意味があります。

秘密保持契約(NDA)の雛形

秘密保持契約書の雛形は文献などでいろいろと紹介されていますが、経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~」の「【参考資料2】各種契約書等の参考例」で公表されているものも参考になる雛形の一つです。

秘密保持契約書は迅速に締結する必要がありますので、一通りの必要な条項をカバーしてくれる雛形を使うことは、契約をスムーズに進めるために有用です。

もっとも、雛形はあくまで雛形です。

繰り返しになりますが、秘密保持契約で定めるべき内容は、取引等の目的・実態や、自社が秘密情報の開示側か受領側かで大きく異なります。

雛形をそのまま使用するのでは、十分にリスクを防ぐことが出来ない場合もありますので、必ずリーガルチェックを行う必要があります。

▽参考リンク
経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~」令和4年版,平成28年(参照2023.06.07)

秘密保持契約(NDA)に関するトラブルは弁護士へ相談を

企業にとって秘密情報は、漏洩や目的外使用があった場合のリスクが非常に多いものです。

したがって、重要な情報を開示するときは、その契約書でリスクが防ぐことができているのか、事前に弁護士のチェックを受けることが望ましいでしょう。

また、秘密情報の漏洩や目的外使用等のトラブルが発生した場合に適切に対応するには多数の法律や過去の裁判例に関する専門的知識が不可欠です。

トラブルが発生した場合は、早めに弁護士に相談しましょう。

まとめ

今回は、秘密保持契約の必要性や主な契約事項、秘密保持契約を締結する際のポイントなどについて解説しました。

秘密保持契約書は、迅速に締結しようとするあまり、雛形をそのまま使ってしまうケースもあります。

しかし、これでは、守るべき秘密情報がきちんと守られなかったり、秘密情報を受領する際に過度な負担を追いすぎてしまったりするケースがあります。

秘密保持契約書は、これから一緒に事業や研究を行う相手と締結するものです。

契約書の内容が不十分でトラブルが発生し、相手との関係を損ねてしまっては意味がありません。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験に基づき、各企業の状況や方針に応じたサポートを提供しております。

秘密保持契約書の作成や、内容のチェック、実際にトラブルが発生した場合の相談にも応じておりますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

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執筆者 弁護士吉田 有美香 東京弁護士会 登録番号62076
弁護士になる以前は、会社の法務担当として相談者の立場にありました。今は相談を受ける立場になりましたが、迅速かつ丁寧で、皆様にとって最良の解決を一緒に考えるといった、自分が弁護士に求めていたことを提供できるよう努めて参りたいと存じます。
得意分野
企業法務、男女問題、刑事事件
プロフィール
兵庫県出身 立命館大学法学部 卒業 中央大学法科大学院 修了 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 勤務 弁護士登録 東京スタートアップ法律事務所 入所