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投稿日: 弁護士 瀧澤 花梨

週休3日制導入のメリットとデメリット・導入時の検討事項を解説

政府が週休3日制の導入を推進する中、週休3日制の導入を検討している企業も増加しているようです。昨今、働き方改革によって労働者の働き方が多様化し、企業にはワークライフバランスを充実させるための取り組みが求められています。

今回は、週休3日制の概要やパターン、導入のメリットとデメリット、週休3日制を導入している企業の実例、導入時の検討事項などについて解説します。

企業の週休3日制に関する基礎知識

かつて、日本では「半ドン」と呼ばれていた土曜日が早期就業となる週休1.5日が一般的でしたが、その後、週休2日制に移行し、今後は週休3日制に移行しようとしています。政府は、今年6月、経済財政運営の柱となる「骨太の方針」に、希望する人は週休3日を選べる「選択的週休3日制」を盛り込みました。様々なメディアも取り上げていました。政府が推奨する週休3日制とは、具体的にどのような制度で、現時点でどの程度普及しているのでしょうか。まずは、制度の概要や現在の普及状況など、基本的な内容について簡単に説明します。

1.選択的週休3日制とは

週休3日制とは、1週間あたりの労働日数を減らし、多くの企業等が採用している週休2日に加え、週内の休日をさらに1日増やし、3日設ける制度のことをいいます。そして、政府が推奨する「選択的週休3日制」は、労働者の希望によって週休3日制を選べるという制度です。

政府の働き方改革が推進されて久しいですが、前述した通り、2021年6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」(骨太方針2021)の中に、選択的週休3日制の普及が盛り込まれています。

2.週休3日制の普及状況

週休3日制を導入することにより、従業員のワークライフバランスが向上し、企業は優秀な人材を確保しやすくなるというメリットを期待できますが、現時点ではそれほど普及していません。

厚生労働省が公開している「令和2年就労条件総合調査(厚生労働省)」によると、週休3日制以上の休日を導入している企業は全体の8.3%にとどまり、週休1~2日の企業が全体の90%以上を占めているのが実情です。

週休3日制の3つのパターン

週休3日制にはいくつかのパターンが存在しますが、以下の3つのいずれかを採用する企業が多いです。

1.1日の労働時間増加・給与維持

1日の労働時間を8時間から10時間に増やすことで、休日を週1日増やすパターンです。
1週間当たりの労働時間は変わらないため、給与も維持されます。導入に際しては、時間外労働時間(いわゆる残業)が発生しないよう、月単位の変形労働時間制を採用するケースが多いです。2015年に、ファーストリテイリングは、このパターンを導入しています。
なお、変形労働時間制とは、1か月以内の一定時間を平均して、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができるという制度をいいます。

2.1日の労働時間維持・給与減

1日8時間の労働時間を維持しつつ、休日を週1日増やすパターンです。
1週間あたりの労働時間の減少に伴い、給与も減少することになり、週休2日と比べて約2割減少するケースが多いようです。
企業は人件費を削減できる一方で、従業員は給与減により生活が圧迫されるため、反発が予想されますが、今後はスタンダードになると言われています。ヤフーや日本IBMでは、このパターンが導入されています。

3.1日の労働時間維持・給与維持

1日8時間の労働時間を維持したまま休日を週1日増やし、給与は週休2日制の水準を維持するパターンです。
1週間当たりの労働時間は減る一方、給与は維持されるため、企業側に負担がかかりますが、従業員にとっては理想的なプランです。日本マイクロソフトで試験的に導入されています。

週休3日制のメリット・デメリット

週休3日制は、企業側、従業員側双方にメリットとデメリットがあり、選択するパターンによっても異なります。具体的なメリットとデメリットについて説明します。

1.週休3日制のメリット

①企業が得られるメリット

週休3日制の導入により、企業側が得られる主なメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 離職者の減少
    週休3日制を導入することで、従業員の働き方の選択肢が増えるため、子育てや介護のために離職する従業員を減らす効果が期待できます。
  • コスト削減
    前述した週休3日制のうち、1日の労働時間維持・給与減のパターンを導入すれば、企業は人件費を大幅に削減することができます。また、給与水準を維持するパターンを導入した場合でも、出勤日数が減少した分、オフィスの光熱費等の経費の一部を抑えることができます。
  • 優秀な人材の確保
    柔軟な働き方を認めている優良な企業というイメージの定着につながるため、求職者が増加し、ひいては優秀な人材が集まりやすくなると考えられます。
  • 生産性の向上
    1日の労働時間を維持するパターンを導入した場合、週休2日制の場合と比較し、週全体の労働時間は減ることになります。そのため、従業員が、メリハリをつけた仕事管理を意識し、ひいては生産性の向上につながるということも考えられます。なお、2019年11月には、日本マイクロソフトは試験的導入の結果として、労働生産性が40%上がったとの結果を発表して、話題になりました。
  • 感染症対策
    昨今、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、企業は極力従業員同士の接触機会を減らす対策をしていますが、週休3日制にして休みを1日増やすことは、感染拡大のリスクを減らすことにもつながると考えられます。

②従業員が得られるメリット

週休3日制の導入により、従業員が得られる主なメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

  • ワークライフバランスの向上
    休日が増えることにより、自分や家族のために使える自由な時間が増え、ワークライフバランスが向上することが期待できます。
  • 自己研鑽の機会の増加
    自分のために使える時間が増えることにより、資格取得に向けた勉強をする、スキルアップのためにセミナーに参加するなど、自己研鑽の機会が増えることにつながります。

2.週休3日制のデメリット

①企業にとってのデメリット

週休3日制の導入による企業側にとっての主なデメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 生産性やビジネス機会の損失
    メリットとして生産性が向上すると述べましたが、生産性があがる企業(部署)もあれば、反対に、単純に労働時間が減少することで、生産性が低下するというリスクはあるでしょう。企業にとっては、生産性を維持するためのハードの導入や、新システムの導入などの負担が増える場合もあります。また、週休3日制を導入している企業は現時点ではまだ少ないため、取引先との交渉のタイミングが合わず、ビジネスの機会損失につながるリスクがあります。
  • 増員の要請
    工場など、昼夜3交代制で稼働している業種では、ラインを維持する為に増員が避けられず、人件費が増加するリスクがあります。
  • 制度構築の負担
    週休3日制を導入する制度構築や、現在の週休2日制度を前提としている勤怠管理を週休3日に変更すると管理が複雑化するため、人事や労務担当者の負担が増加する可能性があります。
  • コミュニケーション不足
    勤務日数が減ることにより、従業員同士のコミュニケーションの機会が減ります。そのため、コミュニケーションの機会を維持するためのツールを導入する等の経費負担が生じる場合もあります。

②従業員にとってのデメリット

週休3日制の導入による従業員側にとっての主なデメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 給与の減少
    週休3日制の導入で、今後スタンダードになると言われているのは、1日の労働時間、給与ともに減少するパターンです。このパターンでは、企業にとってはコスト削減というメリットがある一方、従業員にとっては、生活の基盤である収入が減るという大きなデメリットがあります。
  • 昇給・昇進の格差
    選択的週休3日制を導入した場合、週休2日を選択する従業員と、週休3日を選択する従業員との間で業務成績に差が生じ、昇進・昇給に格差が生じる可能性があります。
  • 将来の年金額への影響
    社会保険料は報酬月額により決定されるため、週休3日制により給与が減った場合は支払う保険料が減ることに伴い、将来受給する年金の金額に影響が及ぶ可能性があります。

週休3日制を導入している企業の実例

実際に週休3日制を導入している有名な企業の実例をいくつかご紹介します。

1.Zホールディングス(ヤフー)

Zホールディングス(旧ヤフー)では、育児や介護などを行っている従業員を対象に、「えらべる勤務制度」と呼ばれる選択的週休3日制を導入しています。
給与が減少するパターンですが、従業員の申請により、月単位で勤務する曜日を変更できる上、週休2日制への復帰も可能など、従業員のニーズに柔軟に対応する制度となっています。

2.日本マイクロソフト

日本マイクロソフトは、1日の労働時間、給与とも維持というパターンの選択的週休3日制を試験的に導入しました。
自己啓発や旅行の費用補助も行っており、企業の負担は大きいと予想されますが、週休3日制を導入したことにより、印刷枚数や消費電力量の削減を実現しています。

3.みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループでは、社員自らが働き方をデザインできるよう、週休3~4日を選択できる制度を導入しています。
1日の労働時間は維持、給与減のパターンなので、週休3日では従来の8割、週休4日では従来の6割まで給与が減少しますが、資格や専門知識を取得し、業務やセカンドキャリアの充実に生かすことが期待されています。

4.佐川急便

佐川急便は、ドライバーの人手不足解消のため、一部地域の正社員を対象として週休3日制を導入しました。
1日の労働時間増、給与維持のパターンのようですが、夜間配送等の顧客のニーズに応えるために拘束時間が長くなりがちという業種の特性に合った制度といえるのではないでしょうか。

5.リクルートホールディングス

リクルートホールディングスは、週単位ではなく、年間休日を145日に増加する制度を導入しています。
年間の所定労働時間と給与は維持しています。週に換算すると週休3日とほぼ同等ですが、年間休日は各自の都合に合わせて自由に取得することが可能です。

週休3日制を導入する際の検討事項

週休3日制を導入する際は、どのような点を考慮して制度設計をすればよいのでしょうか。導入時に検討すべき事項について説明します。

1.週休3日制導入の目的の明確化

週休3日制を導入する際は、ワークライフバランスの促進、育児・介護者へのサポート等、制度導入の目的を明確にして従業員と共有することが重要です。
特に週休3日制を導入することにより給料が減る場合は、目的が不明瞭だと会社への不信感から離職者が続出する可能性があるため注意が必要です。また、業務内容や就業時間の変化等、制度の詳細について周知徹底することも大切です。

2.週休3日制の導入パターン

導入する週休3日制のパターンを検討します。
具体的には、1日の労働時間を10時間に増やすか、8時間で維持するか、それに伴い給料を減らすのか、維持するのかを決める必要があります。それぞれメリットとデメリットがあるので、業界事情や社内の体制などを十分考慮して決定しましょう。

3.対象者の選定

週休3日制を導入する際は、対象を全社員とするか、希望する社員のみとするか、子育て・介護中の従業員など一定の条件を設けるか等、対象者の範囲を明確にしておきましょう。

4.副業や兼業の可否

1日休みが増えることにより、副業や兼業を希望する従業員が増えることが想定されます。特に給与が減少するパターンの週休3日制を導入した場合、従業員としては月の収入の維持のために副業をする必要性に迫られる可能性もあります。

ただし、休日の副業により疲弊して体調を崩すようなことがあっては本末転倒です。既に週3日制を導入した企業の中には、キャリアアップのための副業を認める企業もあれば、週休3日制を導入した目的が子育てや介護を行う従業員のサポートにあるとして副業を認めていない企業もあります。自社の方針に応じて、副業や兼業の可否を決定し、従業員に周知しましょう。

副業を解禁する場合に注意すべきポイント等についてはこちらの記事にまとめましたので、参考にしていただければと思います。

5.賃金の算定

週休3日制を導入した場合の賃金は、特に日給や時間給で計算するアルバイトスタッフなどの場合、最低保証額に抵触しないよう注意が必要です。また、正社員も、週休3日制の導入によって給与が減った場合、報酬月額で算定される厚生年金保険料など社会保険料の納付額は減りますが、将来受け取るはずの年金の金額に影響する可能性があるので、事前に従業員の理解を得ておくことが必要です。

まとめ

今回は、週休3日制の概要やパターン、導入のメリットとデメリット、週休3日制を導入している企業の実例、導入時の検討事項などについて解説しました。

週休3日制は、さまざまなメリットが期待される反面、企業にとっても従業員にとってもデメリットが生じるリスクがあります。週休3日制を導入する際には、メリット・デメリットを洗い出したうえで、生じる可能性のあるデメリットに対する対策を事前に講じておくことが大切です。そして、導入の前には従業員の意見をよく聞いいたうえで、よく説明し理解を求めるようにしましょう。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験に基づいて、各企業の状況に合った週休3日制の導入に関するご相談に対応しております。また、週休3日制の導入に伴う勤怠管理や就業規則の整備など全面的なサポートが可能です。週休3日制の導入に関する相談等がございましたら、お気軽にご連絡いただければと思います。

弁護士瀧澤 花梨 東京弁護士会
約5年の間、一般民事を担当。その経験の中で、弁護士に対する敷居の高さを感じ、抱えているトラブル以前に、弁護士に相談することに大きな緊張や不安を抱えている人が少なくないということを学ぶ。この経験から、相談者にとって親しみやすく、どんなことでも安心して話しせる弁護士を目指す。