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投稿日: 弁護士 表 剛志

フランチャイズ契約(FC契約)とは?流れや契約書作成時の注意点を解説

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フランチャイズ契約(FC契約)とはどういうもの?

フランチャイズ契約(FC契約)とは、フランチャイザー(本部事業者)が、フランチャイジー(加盟者)との間で、自己の商標、サービス・マークその他営業の象徴となる標識、経営ノウハウを用いて、商品の販売等の事業を行う権利を与え、他方で加盟者が、それに対する一定の対価を支払う、という継続的契約をいいます。

フランチャイズ契約の主な特徴

FC契約は、本部事業者と加盟者の双方に義務が生じるもので、法的には「有償双務契約」に当たります。

また、FC事業を行うという性質上、一定期間関係が継続することが想定されるため、当事者双方の信頼関係も重要となります。

さらに、FC契約では、加盟者である多数の事業者を統一的に扱うことが目的とされています。そのため、加盟者ごとに契約内容を変更するといったことはされず、約款のように、契約内容は画一的に定められています。

なお、類似する制度として直営店制(レギュラー・チェーン)がありますが、こちらでは、個々の店舗は独立しておらず本店の一事業所と位置付けられる点で、FC契約と異なります。

フランチャイズ契約書の内容

FC契約では、本部事業者が加盟者に対して商標、商号等の使用を許諾し、経営のノウハウを提供する一方で、加盟者が本部事業者に対して対価を支払う、ということが本質的です。

契約書でも、本質的要素である①商標、商号等の使用許諾に関する事項、②経営のノウハウに関する事項、③加盟者が支払う対価に関する事項について、統一的に定められます。

FC契約は民法の契約類型ではなく、FC契約のみを対象とする特別法も存在しません。

したがって、独占禁止法や中小小売商業振興法による法的規制、公序良俗(民法第90条)に違反しない限り、多様な条項が置かれます。

業種により内容は様々ですが、一般に以下のような内容で構成されます。

  1. 契約における一般的な条項
    ・契約目的
    ・当事者の地位
    ・契約期間
    ・合意管轄
  2. 本部事業者の指導義務
    ・開業前/開業後の指導援助
  3. 店舗の開店・運営に関するルール
    ・商標の使用許諾
    ・営業名および所在地
    ・テリトリー制
    ・店舗の設備
    ・広告宣伝
    ・秘密保持義務
    ・競業の禁止
    ・経営委託、権利譲渡の禁止
  4. 商品等の購入に関するルール
    ・商品の供給
    ・会計の報告義務
  5. 対価の支払
    ・加盟金・保証金・ロイヤリティ
  6. 契約終了・契約上の責任等に関する措置
    ・中途解約・解除
    ・損害賠償
    ・契約終了後の措置

フランチャイズ契約の流れ

FC契約の通常の流れは以下のとおりです。

  1. 加盟希望者による本部事業者の選択
    加盟希望者が希望業種を選び、本部事業者を探します。
  2. 加盟希望者による本部事業者説明会への参加等
    その後、本部事業者の具体的な業務内容等の、さらに細かな点を情報収集します。
  3. 加盟意思の決定・表明と法定開示書面の検討
    加盟の意思を表明し、本部事業者から交付される法定開示書面を検討します。
  4. 立地調査と事業計画の策定
    立地調査等により売上予測を立て、事業計画や資金調達案等を策定します。
  5. FC契約の締結
    以上を経て、FC契約を締結することとなります。

フランチャイズ契約は十分な理解が重要

FC契約では、加盟者は本部事業者に従属するのではなく、独立した事業者となります。

したがって、加盟者は、本部事業者の信用・ノウハウを利用できるものの、店舗経営に当たっては、自らの費用と責任で行う必要があります。

また、そうした信用等を利用する以上、本部事業者としてもそれを損なわず維持するために様々なルールを定めています。

こうした内容を十分に加盟者が理解していないと、加盟者の店舗経営の成功が望めず、本部事業者と加盟者との間で紛争を生じることにもなりかねません。

本部事業者側としては、こうした契約内容について十分説明を尽くす必要があります。

他方で加盟者側としても、十分時間をかけ、疑問を解消した状態で契約に臨むことが肝要でしょう。

フランチャイズ契約で注意するべき項目

以下では、FC契約締結にあたって、特に注意すべきポイントをご紹介します。

商標、商号等の使用について

大前提として、特に商標については登録をしておかないと、第三者から使用差止めや損害賠償を請求される危険があります。

FC契約において、本部事業者の商標等、およびそこから派生する信用は事業の生命線です。

これを第三者の手によって妨げられることがないよう、速やかに商標登録を行って、商標に対する法的権利を確保するべきです。

加盟者側としても、第三者からの予想外の請求を受けないためにも、商標登録の有無を確認するのは重要です。

また、商標の使用においても、本部事業者のブランドイメージや信用を維持する観点から様々な使用条件を定めてられていれば、その条件や使用方法は必ず遵守しなければならないので、この点をしっかり理解しておきましょう。

商品購入・仕入れ

本部事業者の営業秘密やチェーン店としての品質水準・イメージの統一性確保の観点から、本部事業者は、商品や食材の購入先を特定の業者に指定することが通常です。

もちろんこの指定は原則として有効ですが、正当な目的を超えて加盟店に対して不当な不利益を与えるような場合には、独占禁止法における「優越的地位の濫用」等に当たる可能性があります。

本部事業者としては、そもそも仕入先業者の指定に正当な理由があるか、あるとして指定の態様が必要な限度を超えるものでないか、十分な検討が必要です。

加盟店としても、どこまで指定がされているか(「推奨」にとどまるのか「指定」なのか)を十分理解しておきましょう。

加盟金

加盟金とは、FC契約を締結したときに、加盟者が本部事業者に対して支払う金銭です。

「契約金」、「入会金」等名称は様々ですが、意義は同じです。フランチャイズ・パッケージの使用権を加盟者に与えるにあたっての初期費用と位置づけられ、開業時におけるノウハウ開示や商標等の使用、店舗デザインや店舗企画に対する対価等、様々な性格として理解されています。

事業者によっては、加盟金不返還特約が定められている場合もあります。

この特約も原則として有効と考えられていますが、加盟金支払後に物件探索に着手したが物件が見つからなかった、等の理由から開業に至らなかった場合に、加盟金が返還されない状況に端を発してトラブルが生じることも多いようです。

加盟保証金

加盟保証金とは、FC契約に基づき発生する、加盟者の本部事業者に対する債務を担保するために、FC契約締結時に加盟者から本部事業者に対して預託される金銭をいいます。

FC契約終了時に加盟者の負担する債務残額が差し引かれて残余があれば、その残余分は加盟者に返還されます。賃貸借契約でいう「敷金」と理解すると分かりやすいでしょう。

加盟保証金の金額は、ビジネスモデルによって異なります。

本部事業者が商品供給をする場合は高額になる傾向がありますし、本部事業者にすべての売上を送金し、ロイヤルティ等を差し引いた残額を返金する「売上管理制度」を取っている場合には、債務不履行リスクは低減できるので高額でなくても足りるといえます。

ロイヤルティ

ロイヤルティとは、商標やノウハウ等のフランチャイズ・パッケージの継続的使用に対する対価です。

契約締結後に提供される部分についての対価という点で、先述の「加盟金」とは異なります。

この金額の算出方法としては様々なものがありますが、一般的なのは、加盟者の売上高の一定割合をロイヤルティとして徴収する「売上歩合方式」でしょう。

このほか、売上や利益に関係なく定額のロイヤルティを徴収する「定額方式」もあります。

なお、売上歩合方式の場合、「売上高」をどう算出するのかも問題となりえます(販促物としての無料券を利用した場合等において、値引き前の売上高を基準として算定するのか、等)。

この点もしっかり確認しておくべきでしょう。

テリトリー制

本部事業者が加盟者に対して、その販売地域を指定することを、「テリトリー制」といいます。

その内容は様々で、加盟者に対して、指定地域内における、独占的ないし優先的な出店権・販売権を保障する「クローズド・テリトリー制」や、当該地域で本部事業者が出店可能な店舗数の上限を定める「オープン・テリトリー制」があります。

本部事業者としては、運営する事業の性質等に応じて、どの方法が利益を最大化できるか、損失を最小化できるか十分検討することが必要です。

他方で加盟者にとっても、テリトリー制の有無、またその内容が、自身の運営店舗の売上予測にも直結するため、十分な認識、理解を得ておくことが必要です。

契約期間

FC契約の契約期間は、①加盟者側の投資回収、②本部事業者の投資回収、③業態寿命、④環境変化への対応、⑤商圏の固定化防止等、様々な事情に基づき異なります。

契約期間満了後は、更新されない限りは契約終了となりますが、多くのFC契約には「自動更新条項」が入っています。

そのため、解約に当たっては、所定の期間内に解約する旨を申し入れる必要があります。

では、申入れさえすれば常に解約可能なのでしょうか。これについては、特に本部事業者側が解約申入れをする場面については、加盟者が多額の投資をしていることから、その投資回収の期待を合理的な範囲で保護するべく、契約を継続することが難しいようなやむを得ない理由がある場合に限り解約可能である、と考えられています。

解除・損害賠償

FC契約では、本部事業者・加盟者いずれかに違反行為があった場合、契約を解除できる、あるいは損害賠償請求をすることができる、という条項が定められていることがほとんどです。

主な解除・損害賠償請求の事由としては、当事者の経済的信用性を損なう事由(破産、差押え、銀行取引停止等)のほか、チェーン事業に付随する信用や制度の根本を揺るがしかねない事由が定められることが多いです。

具体的には、ロイヤルティ・売上金の未払、指定業者以外からの商品購入、営業秘密の漏洩や競業避止義務違反等があります。

加盟者としては、どのような行為が違反行為に該当するかを、しっかり理解したうえで契約に臨むことが重要です。

中途解約

FC契約においては、契約期間が定められていることが通常です。契約期間内の中途解約については、FC契約書に条項があればそれに従い解約することが可能ですが、条項がない場合には、解除事由が存在しない限り原則として解約できません。

FC契約の中には、こうした中途解約に関して違約金が定められていることも多いです。

その算定方法も、時期を問わず一定金額を支払うとされているものや、解約時から契約期間満了までのロイヤルティの総額を支払うとされているもの等、様々です。

中途解約がそもそも可能か、違約金が生じる場合にはどのように算定されるのかは、入念に確認しておきましょう。

売上予測の根拠

FC事業を行うにあたり、当事者双方にとって売上の見通しは極めて重要です。

契約に至る過程で、本部事業者からモデルケースとして収支等が示されることがありますが、これはあくまで営業結果の一例にすぎず、厳密な意味での売上予測ではありません。

売上予測は、特定の店舗候補物件の具体的な条件や周辺環境等の商圏を調査して、実現可能な売上高を予測するものです。

そのため、具体的な検討を抜きにして普遍的なモデルとして示すことはできません。

加盟者としては、本部事業者が提示するこうした「理想的な」モデルケースを鵜呑みにするのではなく、自らも積極的に、業界研究や商圏の状況等を確認、検討して、慎重に判断をすることが必要不可欠です。

競業の禁止

多くのFC契約では、契約期間中および契約終了後一定の期間内は、FC事業と同種または類似する業種を行ってはならないという「競業避止義務」が定められています。

これは、FC事業に関する営業秘密を保護するとともに、商圏と顧客を確保するために定められているものです。

契約終了時でも競業避止義務は原則有効です。しかし、営業の自由を制約する側面もあるため、過度に広範な定めとなっていないか、本部事業者としては注意すべきです。

なお、すでに複数のFC事業に加盟している場合、現に加盟しているFC事業と加盟しようとしているFC事業とが競業関係に立たないか確認が必要です。

ここでいう「同種または類似する業種」がどの範囲かも、具体的に確認しておくべきでしょう。

法定開示書面

中小小売商業振興法では、FC事業について、本部事業者の事業概要および契約の主な内容等についての情報を、加盟希望者に事前に書面で開示、説明することが義務づけられています。

この書面を、「法定開示書面」と呼ぶことがあります。

法定開示書面で開示、説明が求められている事項の中には、立地条件が類似する店舗での過去3年間分の収支や、加盟店から徴収される金銭に関する事項、経営指導の内容等、加盟者としてFC事業を行っていく上で必須ともいえる情報が多数あります。

これらの記載内容をしっかりとチェックするとともに、契約書と見比べつつ、双方に齟齬がないかも十分確認することが大切です。

フランチャイズ契約で起きがちなトラブル

FC契約において起きる可能性のあるトラブルの大半は、FC契約の内容に対する理解・確認不足、予測と現実との乖離が原因です。

具体的には、以下のような事例があります。

  • 経営指導や援助が不十分なので契約を解消したいが、中途解約が認められず違約金を支払う羽目になった。
  • 開業から一定期間後に、近隣に別の加盟店が開設された。
  • 想定以上にロイヤルティが高額であり、売上をあげても思ったほど利益が伸びない。
  • 本部事業者から求められていた商標の使用方法に思わぬ形で違反することとなってしまい、契約解除、損害賠償請求を受けてしまった。
  • 店舗確保等の都合により結局開業できなかったが、加盟金が返還されなかった。

こうしたトラブルの多くは、契約締結時の認識のずれ(不十分な理解)が原因です。

契約締結を軽々とするのではなく、疑問点は本部事業者の担当者にとことん確認をし、FC契約への理解を深めてから契約締結をするべきでしょう。

フランチャイズ契約に関連する用語

①独立事業の原則

本部事業者と加盟者は、一見、通常の企業における本店・支店であるかのように見えます。

しかし法的には、加盟者は従属的立場ではなく、本部事業者とは独立した事業者です。

このため双方間の取引には、事業者間の取引に関する法令が適用されます。

独占禁止法も適用範囲となりますので、本部事業者が不当に一定の取引を強いる等の行為は、同法違反の可能性があります。

②優越的地位の濫用

本部事業者が加盟者に対して課す制限が、FC事業を適切に行うために必要な限度を超え、加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えると判断されると、優越的地位の濫用として、独占禁止法(第2条第9項第5号)違反となることがあります。

独占禁止法違反となる具体的には、取引先の制限、仕入れ数量の強制等があります。

③秘密保持義務

本部事業者のフランチャイズ・パッケージは、長年蓄積されたノウハウ・営業秘密で、ここから利益を生じます。第三者に開示されると陳腐化してしまいます。

それを防ぐべく営業秘密を保護していくことが、フランチャイズ・システムでは最重要です。

注意すべきなのは、この義務が、双方の従業員との間でも問題となる点です。

従業員から外部に漏洩しても義務違反ですので、従業員の義務履行確保も必要です。

④オープンアカウント

オープンアカウントとは、コンビニエンスストアのフランチャイズ・システムで主に用いられる決済方法です。

具体的には、加盟者が日々の売上金を本部事業者に送金し、本部事業者は、その売上金から、仕入代金、ロイヤルティを差し引いた残金を加盟者に返金する、というものです。売上金だけでは賄えない場合には、本部事業者が差額分につき自動的に融資を行う、という場合もあります。

⑤収入印紙

契約書等の文書に課される「印紙税」を支払うため、文書に貼付する証書を「収入印紙」といいます。

FC契約では、一般に本部事業者から加盟者に対して、商標のほかノウハウや商品等が継続的に供給されるので、「継続的取引の基本となる契約書」(印紙税法別表1・課税物件表6項7号文書)に該当するため、FC契約書にも収入印紙(4000円分)が必要になります。

まとめ

FC契約は、本部事業者にとっては商圏や売上の更なる拡大につなげる強力な手法といえますし、加盟者にとっても、本部事業者の信用やブランドイメージを後ろ盾に事業をスタートでき、適切に対応すれば十分な収益も見込める手立てです。

しかしその反面、契約内容に対する十分な理解も必要であり、決して簡単ではありません。

本記事を参考にしていただき、是非FC契約への理解を深め役立てていただければと思います。

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執筆者 弁護士表 剛志 大阪弁護士会 登録番号61061
主に人事労務を中心とする企業法務を多く取り扱っております。 私は、いかなる内容の法律相談であっても、まずは依頼者さまのお話を真摯にお聞きし、弁護士以前に人として、「共感」することを信条としています。 あなたのお悩みに、まずは人として「共感」し、その次に、法律家として問題点を「整理」して、法的解決を志向することに尽力いたします。
得意分野
企業法務(人事労務)
プロフィール
大阪府出身 京都大学法学部 卒業 同大学法科大学院 修了 弁護士登録 大阪市内の法律事務所勤務 東京スタートアップ法律事務所 入所