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更新日: 投稿日: 代表弁護士 中川 浩秀

法人向け弁護士費用の相場と料金体系・料金が安い法律事務所の落とし穴

法人向け弁護士費用の相場と料金体系・料金が安い法律事務所の落とし穴
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昨今、企業活動を取り巻く環境が大きく変化し、法改正や新法の成立・施行も進む中、法人や企業が弁護士への相談・依頼が必要なトラブルや問題に直面する機会は以前よりも増えているのではないでしょうか。しかし、弁護士への相談や依頼にかかってくる費用に関しては、費用体系や料金の相場がわかりづらいかと思います。

従業員との労使トラブル、売掛金等の債権回収、契約書や社内規則のチェック、著作権などの知的財産等の法的な問題について弁護士に相談したいけれど、弁護士というと敷居が高いイメージがあり、高額な費用がかかりそうで不安なため、躊躇してしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで、今回は、法律事務所によって料金体系が異なる理由、顧問弁護士の顧問料の相場や料金体系、タイムチャージ制の相談料の相場、着手金と成功報酬、顧問弁護士と契約するメリットとデメリット、顧問料が格安の法律事務所を選ぶ場合の注意点などについて解説します。

法律事務所によって料金体系が異なる理由

弁護士の報酬の相場や料金システムは、一般の方には若干わかりづらいこともあり、過去には日本弁護士連合会が「報酬等基準」として、料金を一律に定めていた時代もありました。
しかし、2001年3月に閣議決定された「規制改革推進3か年計画」に、弁護士などの業務独占資格(*)の報酬規定の見直しが掲げられ、司法書士や行政書士等の料金の自由化が進みました。自由化の目的としては、国民生活の利便性の向上や公正な競争の活性化等が挙げられています。業務独占資格の報酬の自由化が進む中、2004年4月には日本弁護士連合会の「報酬等基準」も廃止され、弁護士費用が自由化されました。

*業務独占資格:特定の業務に対して、特定の資格所持者のみが行うことが可能であると法令で規定されている資格のこと

自由化により利用者が不利益を被ることを避けるための規定として、2004年4月の弁護士報酬の自由化と同時に「弁護士の報酬に関する規程」が施行されました。この規定では、弁護士の報酬は、経済的利益や事案の難易度、実際にかかった時間と労力等に応じて適性かつ妥当な料金でなければならないとされています(同規定第2条)。また、利用者が事前に報酬について納得した上で依頼できるよう、弁護士は利用者からの依頼の内容に応じた報酬見積書の作成と交付に努めるべきと定められています(同規定第4条)。

月額の顧問料の相場

最近は、大手企業だけではなく中小企業の中にも、法律事務所と顧問契約を結ぶ企業が増えています。2016年に日本弁護士連合会が中小企業15,000 社を対象に実施した「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」では、「弁護士を利用したきっかけ」として「顧問弁護士」と回答した企業は46.6%を占めていました。顧問契約を締結すると、法的なトラブルに直面した際に、いつでも気軽に顧問弁護士に相談できるという安心感があります。また、顧問弁護士のアドバイスを受けながら、自社で使用する契約書の雛形の作成や社内のコンプライアンス教育の実施等を行うことは、法的なリスクマネジメントの強化につながります。

法律事務所と顧問契約を締結すると、月額の顧問料を支払う必要があります。顧問料は各法律事務所が自由に設定できるので法律事務所ごとに異なります。また、同じ法律事務所であっても月の対応時間や依頼する業務内容によって異なります。一般的な相場は5万円~30万円程度です。2004年に弁護士費用が自由化される以前は日本弁護士連合会が事業者向けの弁護士顧問料の最低金額を月額5万円と定めていたため、最低料金を5万円としている法律事務所が多いようです。多くの法律事務所では、企業の規模やサポート内容に応じた複数のプランを用意しています。また、予算に応じたオリジナルのプランを提案してもらえる場合もあります。

追加料金が必要な場合

法律事務所と顧問契約を結び、月額料金を支払っていても、全ての法的トラブルに対応してもらえるわけではありません。契約プランごとに月額の顧問料金内で対応可能なサポート範囲が定められており、サポート範囲以外の依頼については別途、追加料金を支払わなければなりません。月額費用内で対応可能なサポート範囲は法律事務所や契約プランによって異なりますが、多くの法的事務所で追加料金が必要となるケースや月額の顧問料と追加料金の関係性について説明します。

1.訴訟対応は別料金の場合が多い

元従業員からの労働審判の申立てや取引先からの訴訟を提起された場合の対応を顧問弁護士に依頼した場合、ほとんどの法律事務所では月額の顧問料金とは別に着手金や報酬金等の支払いを求められます。示談交渉や調停の場合も同様です。ただし、多くの法律事務所では、顧問契約を結んでいる企業に対して、着手金が割引になる顧問割引制度を導入しています。割引率は法律事務所やプランの内容によって異なりますが、10%~30%程度の割引が適用される場合が多いようです。法律事務所側としても、顧問契約を締結して社内の実情や方針をある程度把握しているクライアントの弁護を引き受ける場合、一からヒアリングを行う時間や手間を削減できますし、毎月一定金額を支払ってもらっていて信頼関係ができあがっていため、割引が可能なのです。また、依頼者側の企業にとっても、法的なトラブルに直面した際に慌てて弁護士を探す手間が省けますし、自社のビジネスや方針を理解している顧問弁護士に担当してもらうことで、自社に有利な結果を得られる可能性が高まるというメリットがあります。

2.月額の顧問料と追加料金の関係性

前述の通り、法律事務所の顧問料の一般的な相場は5万円~30万円程度ですが、最近は月額の顧問料が1万円~3万円程度という格安の顧問契約プランを提供する法律事務所も登場しています。ただし、月額の顧問料が安く設定されている場合、顧問料の範囲内で受けられるサポートの範囲が非常に狭く限定されている場合もあるため、注意が必要です。範囲外のサポートを受ける場合は別途追加料金を支払う必要があるため、実際にかかる費用が予測しづらいというデメリットもあります。

タイムチャージ制の相談料の相場

弁護士が依頼された案件の処理に要した時間に応じて課金する「タイムチャージ制」という料金システムを採用している法律事務所もあります。タイムチャージ制は米国などで広く普及している料金システムで、弁護士が依頼された業務を完了するまでに費やした時間に応じた料金が請求されます。時間単価は法律事務所によって大きく異なりますが、1時間10,000円~50,000円程度が相場です。担当する弁護士の法曹経験年数に応じた時間単価を採用している弁護士事務所もあります。タイムチャージ制の場合、顧問契約を締結していなくても、契約書のリーガルチェック、売掛金の回収、クレーマーへの対応など、企業法務全般に関する相談ができます。月額の固定費がかからないため、顧問弁護士に相談する案件が少なく、相談事がまったくない月があるという場合はタイムチャージ制の法律事務所を利用するとよいかもしれません。ただし、法的トラブルに直面した際にかかる料金を事前に予測しづらいというデメリットもあります。

着手金・成功報酬・日当の相場

訴訟等の法的手段による解決を依頼する際に弁護士に支払う費用として主に着手金と成功報酬の2種類があります。また、実際に弁護士が稼働した分の日当の支払いも必要です。着手金、成功報酬、日当の内容や相場について説明します。

1.着手金の相場

着手金は依頼時に発生するもので、結果にかかわらず原則として返金されません。着手金は、示談交渉のみで解決できる場合は10万円~20万円程度で済むケースもありますが、訴訟に発展する場合の相場は30万~50万円程度です。

2.成功報酬の相場

成功報酬は、訴訟や示談などが成功して、依頼者側が利益を得られた場合に支払いが必要となる報酬のことです。金額は示談や裁判で得られる経済的利益(相手から受け取る金額)に応じて変動します。成功報酬の割合は法律事務所によって異なりますが、一般的に得られた利益の10%~20%程度に設定されているケースが多いです。
成功報酬の“成功”の定義は法律事務所によって異なりますが、勝訴判決を勝ち取った場合だけとは限りません。和解により解決して和解金を受け取った場合も成功に含まれます。ただし、依頼者が利益を得られなかった場合、支払う必要はありません。

3.日当の相場

日当は、弁護士が裁判や審判等に出廷のために費やした時間に応じて支払われる報酬です。成功報酬とは異なり、依頼者側が利益を得られなかった場合でも支払う必要があります。2004年4月に廃止された日本弁護士連合会の「報酬等基準」では、半日(往復2~4時間)で3~5万円、1日(往復4時間以上)で5~10万円と規定されていました。そのため、現在も、多くの法律事務所はこの料金を採用しています。また、弁護士が裁判所まで移動する際にかかる交通費や遠方の場合の宿泊費、印紙代や郵送代などの実費も依頼者側が負担します。

顧問弁護士と契約するメリットとデメリット

訴訟等の法的手段による解決を弁護士に依頼する際は、顧問契約の有無に関わらず、着手金、成功報酬、日当等の支払いが必要となります。顧問契約を締結されている場合は着手金が割引になるというメリットはありますが、それ以外にもメリットはあるのでしょうか?顧問弁護士と契約するメリットとデメリットについて説明します。

1.メリットは迅速な対応が可能なこと

顧問弁護士と契約するメリットとして、普段からコミュニケーションを取り、自社のビジネスや方針を理解してもらっているため、迅速な対応が可能になるという点が挙げられます。従業員や元従業員からハラスメント問題や労使関係のトラブルによる労働審判の申立てを受けた場合、企業側は第一回の期日に間に合うように限られた時間内で必要な証拠を集めて答弁書を作成する必要があります。そのような場合も顧問弁護士に連絡すれば、迅速に対応を進めてもらえるため、自社に有利な結果を得られる可能性が高まります。

また、取引先の経営状況が悪化して売掛金が回収不能な状態に陥っている場合、早い段階から適切な対応を行わないと売掛金が回収できない可能性もありますが、顧問弁護士に相談すれば、状況に応じた最適な手段で対応してもらえるため、売掛金を回収できる可能性が高くなります。

2.月額の固定費はデメリット?

顧問弁護士と契約するデメリットとして、月額の固定費がかかるという点があります。顧問料が月額5万円の場合、年間60万円のコストがかかることになります。
しかし、顧問弁護士がいない場合、労働審判や債権回収など迅速な対応が必要となるトラブルが発生した際に対応が遅れて、多額の負担を負う可能性もあります。例えば、元従業員が、職場のパワハラ被害が原因でうつ病を発症し退職した場合、労働審判で200万円以上の慰謝料を支払いが求められるケースも珍しくはありません。また、取引先の経営状況が悪化して、売掛金が回収できずに200万円以上の損害を被るという事態も起こり得ます。実際、「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」では、企業が抱える“困りごと”の1位が雇用問題(37.1%)、2位が債権回収(30.3%)という結果でした。
法的なトラブルが発生し、適切な対応が取れない場合は、年間の顧問料の数倍以上のコストがかかることになりますが、顧問弁護士を有効活用すれば、トラブルが発生した際に迅速な対応が取れるだけではなく、トラブルを未然に防ぐことも可能なのです。

格安の法律事務所を選ぶ場合の注意点

「顧問弁護士の必要性は理解しているけれど、月額顧問料についてはできるかぎり安く抑えたいので、顧問料が格安の法律事務所と契約したい」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、格安の顧問料には格安なりの理由があります。以下では、格安の法律事務所を選ぶ場合の注意点について説明します。

1.サポート内容と実績を確認

前述の通り、弁護士報酬が自由化されたため、現在は月額の顧問料が1万円~3万円程度の格安の顧問契約プランを提供する法律事務所も存在します。しかし、顧問料が安い代わりに、顧問料の範囲内で受けられるサポートの範囲が限られている場合も多いです。どういうことかと言うと、1万円のプランの場合には月1回の相談だけで、それ以外の業務、例えば契約書のチェックなどをお願いしようとするとその都度タイムチャージで月額顧問料は別途費用がかかるというケースがあります。月額の顧問料だけではなく、顧問料の範囲内で受けられるサポートの内容についてもしっかり確認することが大切です。

また、企業法務の経験が浅い法律事務所が安い料金を設定している場合もありますので、企業法務の実績についても確認するとよいでしょう。
「安かろう悪かろう」とまでは言いませんが、実績がある弁護士にきちんと対応してもらおうとすると、それなりの報酬がかかってくるのは仕方ありません。自社が顧問弁護士に期待するサービスレベルを満たしてくれるのかをきちんと確認することが肝要です。

2.自社のビジネスを理解しているかを確認

顧問弁護士と契約を結ぶメリットの一つとして、「自社の方針やビジネス、市場環境、さらにはメンバーのパーソナリティーを十分に理解した上で、最適な対応をしてもらえる」という点があります。しかし、これは、”良い”顧問弁護士を確保できた場合に限ります。私が考える”良い”弁護士というのは、「自社のビジネスを理解している弁護士」を指します。
顧問料が安い法律事務所の中には、自社のビジネスを理解していなかったり、毎回違う弁護士が担当したりするというシステムを採用しているケースもあるので注意が必要です。基本的に1~2人程度の担当が固定で決まっていて、自社のビジネスをきちんと理解している弁護士から継続的にサポートを受けることが可能かという点も確認するとよいでしょう。

まとめ

今回は、法律事務所によって料金体系が異なる理由、顧問弁護士の顧問料の相場や料金体系、タイムチャージ制の相談料の相場、着手金と成功報酬、顧問弁護士と契約するメリットとデメリット、顧問料が格安の法律事務所を選ぶ場合の注意点について解説しました。

顧問弁護士と契約すると月額の費用はかかりますが、従業員との間の労使トラブル、売掛金の入金遅延、契約書の不備、顧客からのクレームなど、企業が直面する法的なトラブルに迅速かつ的確に対応し、未然に回避する方法についてもアドバイスを受けることが可能です。顧問弁護士選びは、いわば「投資」に似ています。「どの弁護士・法律事務所を選ぶか」という銘柄選びを正しく行えば、その弁護士・法律事務所は、法的トラブルを未然に防ぎ事業をスケールさせるための阻害要因を事前に排除し、戦略的に事業を発展させていくための心強いパートナーとなってくれるでしょう。

我々東京スタートアップ法律事務所は、各企業のニーズや予算に合わせたオリジナルの顧問契約プランを提供しています。顧問弁護士の契約をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社